―「ユーザーフレンドリー」もコンセプトをもっと明確にして、それ自体がサイトの魅了あるキャラクターになり、その磁力でいろんなものがここに吸い寄せられるというものにしたいんです。―
益田 そういうときは、少なくとも1人の人が実際に使ってみて良かったとか、そういう実証性も大切だと思います。タレントのイメ ージを借りて商品イメージを上げるみたいな方法はやめて、実際に使ってみた一般の人が、これはこういうふうに良かったとか、こんなに素敵だと言ってコメントする。読者や関係者の少なくとも1人がいいと思っているなら、それは少なくとも何人かにとってはいいわけです。そんな姿勢があるといいですね。
―実際使った方の口コミが拡がって、サイトのファンクラブみたいなものが、自然発生的にできてくるといいですね。―
益田 大学や専門学校で教えていると、学生たちはなんの制約も付けずに好きにデザインさせても、結構面白いことを考えるんです。ユニバーサ
ルデザインもだいたいどういうことかわかってるから、メディアを使っていろんなアイデアを出せると面白いと思いますよ。なかにはしょうがないのもあったりするんだけど、面白いアイ
デアを毎号ひとつかふたつ掲載する。そのなかから、ある文脈的な整合性を持ったものは商品化するような仕掛けができたら、見る方も微笑ましいと思いますね。
最近少し悲しいのは、ユニバーサルデザインという言葉をある種のブランドや商標的に使おうという動き。基本的な思想だけは明確にして、あとはちょっとラジカルに学生なども使いながら、市場を掻き回すぐらいのことをやる方がいいのでは。
―それだけユニバーサルデザインという言葉に対する認識も変化してきましたね。―
益田 最近、ユニバーサルデザインが結構売れるということで基幹商品の開発にユニバーサルデザイン的な要素を入れるメーカーも増えてきました。大手メーカーのデザイナーも本気で取り組み出しています。だから最近は、ときどき面白いモノが出てきています。
一方地方の中小企業の場合は何もかも自分のところで開発するしかないけれど、状況を見て、ユニバーサルデザインというものに自分も参加できるのだということがわかると、本気になって開発や経営に筋が通るからリアルです。それはすごく面白いし、ウェブの柱にもなると思います。地方の中小メーカーは、大手のような独自の流通ルートを持っていないので、こういうものならこの流通メディアに載せてもらえるということがはっきりしてれば、開発側にも大きな動機づけになります。
―地域に埋もれて十分活かされていない技術なども、モノそのものの良さという視点で、どんどん紹介していきたいですね。当面は、既存のモノを集めていきますが、
将来的には開発の方が重要だと考えています。―
益田 それはできると思います。マーケットとコミュニケーションできるチャンネルとビジネスチャンネルを提供すればいい。いま、各地で公金を導入したコンペを実施して、試作代を援助するような事業がありますが、目標が明確ならば、各企業とも一生懸命取り組みます。開発は彼らの仕事ですからね。それに替わる舞台としてウェブがあって、そこに明快なテーマがあるなら、仕掛けとしてさらに有効でしょうね。
―ウェブと雑誌を相乗的な触媒にしながら、官と民の中間的なフィールドで、補助とデザイン開発を一体化する、よりアグレッシブなシステムをつくりだすことが可能ではないかと。―
益田 可能だと思います。概してユニバーサルデザイン系のグループが特定の企業の連合体であったり、ある種閉鎖的な研究会だったりしがちなのに対して、まったくオープンであればすごく参加しやすいと思います。去年、僕らが扱っている商品をストックホルムの専門店に持っていって見せたらすごく喜んでくれました。ヨーロッパやアジア各国でもユニバーサルデザインへの関心が高まっているので、これからは少し国際的なマーケットに入っていくのも面白い。
雑誌とウェブの連動で製品開発を促進し、商品化につなげていくエンジンになる可能性は大きいと思いますよ。
【写真: 「tempo mini」 器に引っ掛けられるパーティ化渡来ー(中野科学) 素材:トウモロコシを原料とするポリ乳酸樹脂】
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