愛・地球博では子どもの衣装をデザインするなど環境問題に関心を寄せているひびのさん。これまでの技術を生かし、履き心地を追求する水鳥工業。ひびのさんのスケッチを元に、デザイン性、履きやすさ、強度などの条件を満たすため、試行錯誤しながら完成させた。
静岡県はひのきの産地でもある。「計画的な伐採と植林は、山の生態を守り活性化にもつながります。
環境に配慮しながら、日本の素材や技術を活かしていきたい」と秀代さん。ひのきは国産材を使用。
足のアーチに沿ってゆるやかにカーブしているひのきの台。履いてみると足を包み込むようなフィット感が心地
よい。歩行音を軽減するため、裏にはゴムが付いているのでマンションなどでも安心だ。ひのきは肌触りのよさから浴槽にも使用されてきた。最近では香り成分、フィトンチッドのアロマ効果や消臭・抗菌性も注目されている。
無垢のひのきに合わせて、生地は人工皮革を切りっぱなし・パンチング仕様に。外で履きたいという要望に応えるため、強度や耐久性を高めたり、素材のバリエーションも増やしている。
「お風呂あ
がりに履くと気持ちよさそうですね」と尋ねると、「水には弱いので、濡れた足で履いたり、水辺ではおすすめできませんよ」という秀代さんも、実はお風呂あがりに愛用している。
歌舞伎の衣装も手掛けているひび
のさん。パリで行われた展示会で「ひのきのはきもの」を隈取りのイメージと評した人がいるそうだ。ひびのさんは特に歌舞伎を意識したわけではないというが、「今までは、あまり日本の伝統と接点のないところで仕事を
していましたが、最近は狂言など、さまざまな所で仕事をさせていただき、自分が日本人だったことを感じ、大切に思っています」。
斬新なデザインでありながら、どこか下駄や草履のイメージと重なる。ひのきの質感やシンプルなデザインは、日本人が持つ独自の素材や触感に対する感覚を満足させ、性別や年齢を問わず、さまざまな暮らしのシーンに馴染む。