ほっぺが落ちそうなフォルムだ。もちろん食欲ではない。街や里山への外出欲をそそるのである。カメラ、ジャケット、お弁当、シライデザインの定番リュック
に詰め込む品々に思いを寄せただけでワクワクした気持ちになる。
「大人の本物志向に応えたかった」と白井要一氏。商品がうず高く積まれた事務所で大きな体格がい
かにも窮屈そうだ。白井氏のデザインは本人の人柄そのもの。素朴でシンプルだ。「デザインの原点は自分が楽しむことです」。そう断言する白井氏自身、アウトドアの愛好家だ。ス
キーやフルマラソンをこなし、奥多摩で開催される日本山岳耐久レースに毎年参加している。1000メートルの高低差がある72キロメートルのコースを24時間で踏破する過酷なレー
スだ。午後1時にスタートし、ゴールは翌朝になるという。趣味が高じ、プロの登山家を招聘した軽登山教室をも自ら主催するほどだ。
アウトドアは試作品をテストするフィー
ルドになる。使い勝手をフィードバックし、改良や開発に反映させる。そして生まれた帆布バッグの数々。洗練されていて無駄が無い。「ベテランのフィールド愛好者ほど道具をシンプ
ルに使いこなすものです」。リュックのポケットが多ければよいということではない。収納を増やしても本当に使うものは少ないからだ。そこで本体への収納機能を優先し、ポケットは元蓋
のみに集約した。使いこなすことで生まれた機能美。手に取ると意外に軽く、体に心地よくフィットする。
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