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ユニバーサルデザインとは?
 
2.ユニバーサルデザインの事例と動向
 
#54 UDプロダクトと流通
 
 作り手とユーザーをつなぐコミュニケーション―
 
#54   UDプロダクトと流通
#54 1 江戸木箸 ―大黒屋―
#54 2 ひのきのはきもの ―ひびのこづえ×和工房みずとり―
#54 3 Kontex ―近藤繊維工業―
#54 4 フレンズ・フォーエバー ―HOGRI―
#54 5 TO:CA ―I.D.E.A International―
#54 6 三川内焼き ―平戸洸祥団右ェ門窯―
#54 7 帆布バッグ ―シライデザイン―
#54 8 「地方の力と使い手を結ぶユニバーサルな流通の仕組みが必要」
                                  ―益田文和氏―
江戸木箸  ―大黒屋―
 
 
創意工夫の職人芸で美味しいものをさらに美味しく
食事の道具、立ち居振る舞いの物差し
 
 日本人の食事に欠かせない箸。料理をほぐし、切り分け、はさみ、口に運ぶ作業を手先の延長としてこなしてくれる。箸を使う民族は他にもあるが、箸だけに 頼るのは日本人だけだ。我々はまた、物心付いた頃から箸の使い方を躾けられる。大人になって正しく使いこなせなければ育った家庭環境を疑われかねない。食事の道具であり、立ち居振る舞いの物差しでもある箸。それだけ重要でありながら、箸に無関心な人は意外に多い。色や柄で選んでも、自分の手に合ったものを厳選することは少ない。
 
写真:ずんぐり箸
 
【写真:ずんぐり箸 長い箸だとつまむ力が入りにくい人のために考案。短く先端までの傾斜があるので楽な力で使える】
 
ユーザーフレンドリー 江戸木箸はこちら
 
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食い先一寸の技術
 
写真:工房で製作に励む竹田勝彦さん

 この疑問に真摯に受け止めたのが大黒屋の主人、竹田勝彦氏だ。東京向島の工房で「江戸木箸」の製作に励む。東京は80年以上の歴史をもつ箸の産地だ。大正初期、胴張り形と呼ばれる四角い箸を作り始めたのが原型とい われている。

 竹田氏は工房を開く前、箸問屋の営業に携わっていた。使いやすい箸を作りたいとの願いから箸職人に転向。独創的な箸を次々と開発し、根強いファンをもつにいたった。「江戸木箸」は、他の産地と区別するための商標登録だ。現在、約200種類を専門店中心に販売している。

 「江戸木箸」はすべて手づくりである。先が細いので、折れないように縞黒檀や紫檀、鉄刀木(たがや)といった硬い木を使う。まず、寸法切りされた木材を大ま かな箸の大きさに裁断。次にベルトサンダーでやすりをかけ、箸の形を作る。この工程で、どれを組み合わせても違和感がないようにすべてを同じ形にする。木の性質はそれぞれ違うため、高度な技術と豊かな感性を要する。仕上げの カ ンナ掛けで丁寧に磨き上げるまで約10工程。最後に生漆という無色の漆を擦り込む。木地に漆がしみ込むようにぎゅっぎゅっと擦り込むことで水に強くなり、木の素朴な肌合いが出るという。

 「箸づくりで一番気を使うのは食い先 一寸と呼ばれる先端3センチの部分。ここは箸の心臓部です。細くぴったり合わないと使いにくい」と竹田氏。なるほど、根元から先端までがすーっと細く閉じていてシルエットが美しい。先端が細いほど食感を邪魔しない利点もある。

【写真:工房で製作に励む竹田勝彦さん カンナ削りで箸の形を整える】
 
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使いやすさを追求した機能
 

 「江戸木箸の特長はなんといっても機能です」。使いやすさを追求した結果、工夫を凝らした独自の形状にいたった。8角削りと5角削りの断面がそれだ。4角の箸は指に引っかかって動きにくく、丸い箸はすべりやすくて持ちにくい。その点、8角削りは4角削りの倍の面があり動きがなめらかだ。一方の5角削りは箸を操作する親指・人差し指・中指にちょうど収まる。少々持ち方が悪くても、箸の方でスムースな操作を補ってくれる作りだ。

 「ずんぐり箸」と呼ばれる五角削りの変則バージョンもある。「箸を短く持つのは、つまむ力が弱い人や箸づかいが下手な人なんです。そこでずんぐり箸を作りました。持つ部分は普通の太さですが、先端までの傾斜が急 なので、弱い力でも操作しやすくなっています」。年齢や性別を問わず使いやすい箸として評判は上々という。

 他にも納豆箸と豆腐箸などの専用品もある。納豆箸は混ぜやすいよう、箸先を太く丸めに仕上げてある。一方の豆腐 箸は崩さずにつかめるよう、面を大きく削ってある。洋食ではスプーンやフォークを料理によって使い分けている。箸も用途によって使い分けるべきとの考えからだ。

 箸の起源は紀元前13〜14世紀の古代中国に遡るといわれている。 以来、原形がほとんど変化せずに継承されてきた。「江戸木箸」はこうしたベーシックな道具にも工夫次第で市場開拓の余地が十分にあることを伝えてくれている。

 
写真:8角削り   写真:5角削り
 
【写真:ずんぐり箸 長い箸だとつまむ力が入りにくい人のために考案。短く先端までの傾斜があるので楽な力で使える】
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