「江戸木箸の特長はなんといっても機能です」。使いやすさを追求した結果、工夫を凝らした独自の形状にいたった。8角削りと5角削りの断面がそれだ。4角の箸は指に引っかかって動きにくく、丸い箸はすべりやすくて持ちにくい。その点、8角削りは4角削りの倍の面があり動きがなめらかだ。一方の5角削りは箸を操作する親指・人差し指・中指にちょうど収まる。少々持ち方が悪くても、箸の方でスムースな操作を補ってくれる作りだ。
「ずんぐり箸」と呼ばれる五角削りの変則バージョンもある。「箸を短く持つのは、つまむ力が弱い人や箸づかいが下手な人なんです。そこでずんぐり箸を作りました。持つ部分は普通の太さですが、先端までの傾斜が急
なので、弱い力でも操作しやすくなっています」。年齢や性別を問わず使いやすい箸として評判は上々という。
他にも納豆箸と豆腐箸などの専用品もある。納豆箸は混ぜやすいよう、箸先を太く丸めに仕上げてある。一方の豆腐
箸は崩さずにつかめるよう、面を大きく削ってある。洋食ではスプーンやフォークを料理によって使い分けている。箸も用途によって使い分けるべきとの考えからだ。
箸の起源は紀元前13〜14世紀の古代中国に遡るといわれている。
以来、原形がほとんど変化せずに継承されてきた。「江戸木箸」はこうしたベーシックな道具にも工夫次第で市場開拓の余地が十分にあることを伝えてくれている。
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