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2.ユニバーサルデザインの事例と動向
 
#73 障がいのある社員が参加して進める製品開発、IT人材育成プログラム
 
─ マイクロソフト ─
 
仲田裕紀子/ユニバーサルデザイン編集部
 

ITは障がいをもつ人が仕事をするうえでも大きなツールだ。
マイクロソフトでは、スペシャリストとして働く障がいのある社員が参加して、
製品開発や障がい者支援プログラムを実施している。
東京大学と共催している「DO-IT Japan2008」は、障がいのある高校生への教育・キャリア形成のための支援を行い、将来、専門性を身につけ、仕事の選択の幅を広げようというものだ。

写真:マイクロソフト新宿本社

  マイクロソフト新宿本社
 

 

 

ITスペシャリスト養成と社内研修
 
 「仕事が大好きで、見えなくなってからも、どうやって仕事に復帰しようかと考えていました」。マイクロソフト人事本部の木原暁子さん。転職希望者の就業状況をかつての同僚や上司に聞いてシートにまとめるリファレンスチェックや、障がい者採用に関する採用スケジュールを組んで、広告掲載から内定提示に至るまでの過程すべてに携わっている。採用にあたっては、コミュニケーション能力、業務知識、労働意欲の3つを重視しているという。
木原さんは採用面接で、意欲のある人は多いが、スキルのある人が少ないと感じていた。「スペシャリストとしてのスキルが必要なのです」。そんな課題を解決するのが「ITラーニング」と呼ばれる12カ月のインターンシップ・プログラムだ。さまざまな障がいをもつ人がIT技能を習得し、同社のMCA、MCPという資格を取得するもの。ITラーニングのメンバー はITのスペシャリストとして活躍できる道が開かれる。
人事本部長の四方ゆかりさんは「IT企業にしかできないプログラムです。ITは、障がいのある方にとって仕事を通じて社会参加するための大きなツール。技術や資格を得ることで、在宅で仕事をするなど働き方を多様化できます」という。マイクロソフトのエンジニアが増えることは、社会や本人のためばかりでなく、長期的には会社のメリットにもなる。
さらに社内に向けて木原さんが企画した「Windmill(ウィンドミル)」というプロジェクトも実施されている。「ウィンドミルは風車。中心の留め金が会社で、一人ひとりの社員の力で風を起こし、企業文化や社会を変えていくという願いを込めました」。障がい者と共に働くことへの理解を深める社内研修プログラムでは、レクチャー、障がい体験の後、「ITラーニング」 メンバーと交流をはかる。経験も人種も障がいの内容も さまざまな障がい者 に触れ、社員の意識も変わっていく。 「障がいを知らないから戸惑うだけ。 障がいのある人が働くというのは、ひとつの多様性をもった人が働くということ。障がい者、人種や国籍の違う人、家族の介護をしている人など、多様な価値観をもつ社員が働きがいのある会社であることをめざしてダイバーシティに取り組んでいます」と四方さん。
 
DO-IT Japan 2008   写真:障がいをもつ高校生が参加した「DO-IT Japan 2008」
 
 
製品のユニバーサルデザインと人材育成支援
 

 PCを人々にとって身近なものにさせたWindows95は、わかりやすい表示や操作が簡単にできるユーザーインターフェイスで、コンピュータやインターネットを普及させる原動力になった。
技術統括室プログラムマネージャーの細田和也さんは、学生時代からコンピュータを使っていたPC先駆者。90年代当時、本を読み、手書きでレポートを書いている同級生たちのなかで、インターネットで情報収集してレポートを作成していた。幼少時に病気がもとで視力を失った細田さんは、Windows95の音声環境に興味をもっていた。「96年に米国の視覚障がいの人たちが音声環境でPCを使っているのを見て、帰国後、日本語版での実現を考えた」という。
そして偶然の出逢いがきっかけとなってマイクロソフトで仕事をすることになる。ITを利用してチャレンジド(障がいをもつ人)の就労支援を行うプロップ・ステーションの代表、竹中ナミさんをジャパンタイムズの記事で知り、メールでの交流が始まった。「Windows95の音声環境のことを書いたところ、竹中さんから“言っといたから”という返信がきました。1週間後、マイクロソフトの社長室から電話がきたのです」と細田さんは当時を振り返る。以来、マイクロソフト社内で製品のアクセシビリティを高める活動がスタート。細田さんは、「自分ができないことを技術の力で解決したい。コンピュータで補完できれば大きな力になります」。
Windows95からユーザー補助機能が搭載されるようになり、新製品が発売される度に機能が拡張されている。Windowsは、あくまでも大多数の人が対象なので、特別なニーズに対する機能を補完するソフトウェアは他のメーカーが開発している。細田さんは、このような支援技術の開発者支援も行っている。「操作支援や音声読み上げなど特別なニーズに対応するためのソフトも必要です」。
Windows Vistaは、障がいのある人へのアクセシビリティだけでなく、使いやすさやわかりやすさといったユーザビリティも大きく改善されているという。「働く人も高齢化しているので、オフィスのPC環境のアクセシビリティ向上も必要」と細田さんは示唆する。
イベントやセミナーを通して製品のアクセシビリティについての普及活動や認知度向上を担当している大島友子さん(技術統括室シニアマーケティングスペシャリスト)は、日本商工会議所のPC検定試験をはじめ視覚障がい者向けの試験プログラム支援や大学との共同プロジェクト、社会貢献活動と連携した活動を多数行っている。
「細田さんのような経歴はまれです。大学進学を含め、障がい者支援の情報についてはまだまだ地域格差が大きいので、サポートする側の人材を育てる支援も大切」という。広島大学と共同でアクセシビリティリーダー育成プログラムを実施中だ。
さらに障がいのある高校生の大学進学とキャリアを支援する「DO-IT Japan 2008」を昨年に引き続き、東京大学先端技術研究センターと共催。「障がいをもっていても、学生時代から将来を考え、高い専門知識を身につけることで仕事を選択する幅が広がるはず」と大島さん。
 

代田橋オフィスのロビー   写真:代田橋オフィスのロビー
 
UD仕様の自動販売機   写真:自動販売機もUD仕様。自動販売機やエレベータのボタンにはテプラで点字表示をつけた
 
カーペット上の動線   写真:グレーのカーペットの動線部分を黄色に
 
 
社員の声を聞き、小さな工夫を積み重ねる
 

 多様な社員ばかりでなく、DO-IT Japanに参加する高校生やITラーニング受講者などさまざまな人が来訪するマイクロソフトのオフィス。ハード面でのユニバーサルデザインはどのように実現されているの だろうか。
最先端のITインフラを装備した赤坂オフィスと新宿本社は、07年度日経ニューオフィス賞で情報賞を受賞した。時間・場所の制約を取り除き、社員がいつでもどこでも快適に個々の能力を発揮できる環境を実現している。
入居するビルは最先端のIT環境が求められるため、新しいビルが多い。車いす用トイレやエレベータも装備され、スペースも広く、新築ビルではユニバーサルデザインの基本が整っている場合が多いという。セキュリティと安全性も大きな課題だ。通常、オフィスのドアの開閉時間は短い。木原さんやITラーニング メンバーがもつ カードキーは、余裕をもって入退室できるように長めの設定になっている。木原さんが勤務するようになり、床に物を置かないなど、オフィスの使い方にも自然に注意を払うようになった。
調布オフィスでは、手が不自由な人の入社をきっかけにドアを換えた。それ以前のドアは重く、誰にとっても開閉操作がしにくかったという。「多様な人が一緒に働くことでオフィスの使いやすさを考えるきっかけになります」と四方さん。
オフィスの装備が全部揃っていないからといって、障がいをもつ人を雇用できないというのではなく、ある程度準備しておいて、あとは使いながら工夫していくことが必要だという。四方さんは「意見や要望をオープンに話せる雰囲気づくりも大切」と話す。

ITの力でさまざまな人の夢を実現するのが目標だというマイクロソフト。「多様性は強み」という同社の信念はさまざまな形でオフィスのユニバーサルデザインに現れている。
 
新宿本社の執務エリア   写真:新宿本社の執務エリア。広い動線や段差を設けないなど、オフィスは安全で使いやすい設計
 
 
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