富山ライトレール株式会社
地方都市で拡散型の都市構造を見直し、コンパクトシティを見直す動きが加速している。閑散とする中心市街地に主要施設を整備し、人々の生活基盤を呼び戻すためだ。自動車の代替交通手段として注目を集めるのが超低床式LRT(軽量軌道交通)である。
写真:斬新で可愛らしいポートラムが市街地を走る
富山ライトレール株式会社経営企画部の奥田さんによると、さまざまな対象物を総合的にデザインコントロールし、その質を高めていくため、トータルデザインを導入した。全体ディレクションを担当したのがGK設計だ。車両や電停、サインやカラーシステム、ICカード関連、広報ツール、ユニフォームや名刺にいたるまでをコンセプトに沿ってデザインした。コンセプトはまちづくりと連携して富山の新しい生活価値を創造すること。さらに街の景観をつくって土地の価値を高めることだ。 「何はともあれ、まず乗りたくなることです」と奥田さん。格好よくなければ人は乗らない。車両は一部の部品をドイツなどから輸入し日本でつくられたもので、大きな車窓が特徴だ。先進的なフォルムでありながら、2両編成でどこか可愛らしい。ボディのメインカラーには、立山の新雪をイメージしたスノーホワイトを採用。7編成あるので、それぞれに7色のアクセントカラーを配色している。電停は北前船のマストをモチーフにしている。壁面はガラスなので視認性がよく開放感がある。各電停には屋根付きの無料駐輪場がある。また、終点岩瀬浜の電停はフィダーバスと連絡しており、同じプラットホームで乗り換えできる。
市はまちづくりの一環として市民参加を重視している。収益のためにも市民と企業の応援は不可欠だ。まずは富山港線の愛称を募集。PortとTramの造語でPORTRAMにした。車両も、フェイスデザインは市民アンケートで決定した。電停のガラス面はスポンサーアートだ。風景やお祭りなど地域性をアピールするグラフィックを企業が買い、小さく企業名を入れている。全体で168基あるベンチは、1人5万円で寄贈者のプレートをつける。「ポートラムは自分たちの誇り。自分たちで守っていこうという意識が育っています」。沿線の緑化や花の手入れは地域の人々と一緒に取り組む。自主的にゴミ拾いをしてくれる市民も多い。 2006年11月には、予想を上回るペースで100万人の乗客を達成。グッドデザイン賞などを次々と受賞した。ポートラムは地域力とともに、デザイン力の効果を全国のまちづくりに示している。