ライフスタイルが多様化し、個人の欲求レベルも高くなり、欲求の種類も様々に広がっている。ユーザーたちのこだわりや要求に合わせた製品やデザイン、店舗、サービスなどがあふれている。ユーザーはファッションや食べ物、住まいのデザインから老人ホーム、立ち寄る店など、嗜好や用途に沿ったものを選ぶことができるようになった。最近では旅の予約の仕方も変わってきており、代理店を通すことなく自分でプランを計画し、インターネットを使って直接旅の予約をすることが容易となり、個人でも気軽に旅行にでかけることができるようになった。そのような人々の個性や世代を網羅し、その人それぞれに合った楽しみ方を選択することができる。異なったニーズへのフォローが可能な世の中になってきている。
そのような社会の中で近年「世代間交流」という言葉を耳にする。世代間交流とは核家族化などで世代のつながりが希薄になってきた社会の中でもう一度世代のつながりを結ぼうというものである。交流のやり方についてはいくつか種類があるが、ツールとして遊びが利用されることがある。昔ながらの伝承遊びを通じて、教えながら、話を聞きながら、違う世代とのふれあいを楽しむことができるというものであり、遊びを通じて世代の垣根を飛び越えることができる。最近では、市や区の福祉施設や老人ホームでも世代間交流と呼ばれるプログラムが様々に実施されており、地域に住むこどもたちと囲碁をしたり、折り紙を教えたり、伝承遊びをしたりといった交流がなされている。 また、先駆的な例としては、おもちゃ美術館館長である「多田千尋」氏がすすめるおもちゃを通じた世代間交流がある。東京の中野にある4階建ての「おもちゃ美術館」ではおもちゃの常設展示やおもちゃライブラリーの設置がされており、大人からこどもまで楽しんで手作りのおもちゃをつくるおもちゃ教室が開催されている。 伝統のおもちゃや、世界中の珍しいおもちゃなどが展示され、お気に入りのおもちゃを見つけて自由に遊ぶことが出来る。実際訪れた日にも二人のこどもを連れたおかあさんがプレイルームでこどもと一緒に遊ぶ姿や、小学生たちがおもちゃコンサルタントと呼ばれるボランティアの人々と楽しそうに遊ぶ様子を見ることができた。また「おもちゃ図書館」を高齢者施設に設置し、こどもと高齢者がおもちゃを通じて遊ぶうちに自然と会話が生まれ、笑顔が生まれる。 こういったコミュニケーションへの試みは様々な方面から注目されている。ここではこどもは高齢者から遊びを教わり、高齢者はこどもから元気をもらうことができる。また2008年には現在ある中野の「おもちゃ美術館」が移転し、新しく廃校になった四谷の小学校を利用した「東京おもちゃ美術館」の設立がきまっている。
楽しいを共有することの意味