北信州の集落に金髪のハリケーンが上陸、勢力を拡大中。2002年、日経ウーマン誌の「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、全国のまちづくり・まちおこしに新風を巻き起こしたセーラ・カミングスさんから受けた当時の印象だ。 写真:セーラ・カミングスさん
1998年に長野オリンピックが開催。世界の注目と同調するかのように、斬新な発想を次々とプロデュースしていった。そしてネーミングへのこだわり。のびのびとした言葉遊びは江戸の粋とアメリカンユーモアの融合だ。セーラさん曰く、「ほとんどビョーキです。」 まずはその年にオープンした「蔵部」。酒蔵の一部であることを引っ掛けた。3基の大竈をしつらえたオープン形式の厨房と黒光りする梁に囲まれた大空間が圧倒的な存在感を放つ。当初、市村社長はここを部分改修して品質のよいレトルト食品と自社銘柄の酒を提供する計画だった。本物にこだわるセーラさんはこれに猛反発。海外の建築家を起用して歴史ある枡一市村酒造の文化をそのまま伝えるレストランに仕立て上げた。 「小布施ッション」は2001年8月にスタートし、今年の3月で68回目を迎える。毎月1回、ゾロ目の日に開催。さまざまな分野で活躍する人を講師として招いて食事や酒を楽しむ。「強い思い」「アイデイア」「意欲」を意味する「obsession」との掛け合わせが妙である。 「小布施見にマラソン」は今年で5回目を迎える。速さを競うのではなく、小布施を見て楽しみながら走るミニマラソンだ。昨年の大会では、15歳から93歳までのランナーが参加した。「年齢制限をしないので誰でも挑戦できる。誰もが夢を実現できる町であることをアピールしたい」とセーラさん。 修景事業のフラッグ・プロジェクトが古民家再生だ。高齢・若手の職人が茅葺から瓦作りまで手仕事で協同する。過去から未来への絆を伝統技術で結びなおすことが目的だ。材料にはとことんこだわる。古くなるにつれて上手に年を取れるようにするためだ。「日本では戦前まで、職人たちが設計から施工までを請け負っていました。でも今は設計者と職人の機能が分かれてしまい、伝統文化が引き継がれなくなってしまった。今が古い世代と新しい世代を結ぶラストチャンスなのです」。