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ユニバーサルデザインとは?
 
2.ユニバーサルデザインの事例と動向
 
#39 スポーツから考えるユニバーサルなまちづくりin神戸
 
北岡敏信/ユニバーサルデザイン・コンソーシアム主任研究員
 
 台風の合間を縫うように神戸へ向かう。2年ぶりの神戸だ。思えば、「スポーツのユニバーサルデザイン? 何それ、こじつけだろ」と言われながらも、東から西へ駆け回っていたのが2年前。それが2年後には自治体が中心となって、スポーツをテーマにユニバーサルデザインのシンポジウムを開催する。基調講演者として喋るのはちょっぴり気恥ずかしいが、ユニスポ(スポーツのユニバーサルデザイン)が少しでも市民権を得たと思うと心底嬉しい。新幹線の中で、前回神戸を訪れた時の取材メモを取り出して目を通すと、懐かしさがこみ上げてきた。
サッカーW杯の時に、スポーツボランティアをやりました
スポーツを通じてまちづくりを行う「神戸アスリートタウンクラブ」
スポーツとユニバーサルデザインが出会うまち
スポーツから考えるユニバーサルデザインシンポジウム
サッカーW杯の時に、スポーツボランティアをやりました
 
神戸ウイングスタジアム 地下鉄の駅を出ると突然の雨だ。降りしきる横殴りの雨に濡れながら、待ち合わせ場所のスタジアムへ向かう。2分ほど歩くと、住宅地の中に翼を広げたスタジアムが忽然と姿を現した。待ち合わせ場所はスタジアムに隣接した地域福祉センターだ。朝9時の待ち合わせ時間の20分ほど前に着いたせいか、まだ鍵は閉まっていた。
 寒さの中で立ち震えていると、管理者と思われる70歳前後の男性がやって来たので、事情を話し、建物の中に入れてもらった。雨から逃れてホッとする。地域福祉センターとは主に健康な高齢者を対象とした神戸市の施設である。スタジアムがある地区は神戸市の中で高齢化率が高いほうだ。
 「W杯の時、私たちもボランティアをやりました。ものすごい人、人、人の波。この辺りにあんなに人が集まったのは初めてで、いい思い出です。」
W杯から10カ月、スタジアムは改修工事中だ。「神戸ウイングスタジアム」はW杯会場の中で唯一、公設民活方式で建設されたスタジアムで、運営・管理は設計施工に当たった神戸製鋼と大林組の合弁企業が行う。
 W杯終了後の施設は収益性を考えて、計画段階から終了後の改修は決められていた。スタジアム内にはスポーツジムとレストランが設けられ、ゴール裏のガラス張りのレストランでは、ピッチと同じレベルで観戦できる。
【写真:神戸ウイングスタジアム】
 
 スポーツジムは、すべての人を対象としており、最近人気を集めているアクアビクス用のプールも計画されている。
 「地域のお年寄りが、健康維持のためにも、少しでもこの施設を利用してくれればいい」と、スタジアムの改修工事に付きっきりで、庁舎よりも現場にいることが多かったという、神戸市建設局施設課の栗山明久さんは語る。神戸ウイングスタジアムは、他のW杯スタジアムに比べて敷地が狭いせいか、こぢんまりとしたスタジアムだ。しかし、車いす席のサイトラインは他のどのスタジアムよりも確保されており、前列の人が立ち上がっても視界をふさがれることはない。サッカーの試合では、ゴールシーンで立ち上がる観客が多いので、サイトラインが確保されていないと一番見たいシーンを見逃してしまうことになってしまうのだ。
 スタジアムを出ると、雨は激しさを増していた。その足で、神戸アスリートタウンクラブへ向かう。
 
健康増進につながるアクアビクス用プール   メインスタジアムに設置された車いす席はサイトラインが確保されている
 
【写真左:健康増進につながるアクアビクス用プール、写真右:メインスタジアムに設置された車いす席はサイトラインが確保されている】
 
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スポーツを通じてまちづくりを行う「神戸アスリートタウンクラブ」
 
 全国的に見ても、スポーツNPOの草分けといえるNPO神戸アスリートタウンクラブを訪ねた。廃校になった小学校を改造した生涯学習センターの中にオフィスはあった。教室の雰囲気が残るオフィスにいるのは1人だけ。事務局長の石原正夫さんが出迎えてくれた。
神戸市は市民全員をアスリートととらえ、気軽にスポーツを楽しめるまちにしようと、「神戸アスリートタウン構想」を打ち上げている。この構想を実現するための中核となるのがNPO神戸アスリートタウンクラブだ。
 主催するイベントの中で最大のものは、神戸ウイングスタジアムを貸り切って行うスポーツフェスティバル。このフェスティバルには、子どもからお年寄りまで、障害のある人も含めて、約600人の市民がスポーツに興じたという。
2001年3月には、全国のスポーツNPOを集めて「第1回スポーツNPO全国大会」を主催した。スポーツNPOといっても、その活動は玉石混淆でこの会議に参加したのは460団体中50団体程度だったという。
 神戸市は最終的に小学校区単位(171校、300人規模)に1つ、総合型地域スポーツクラブを創設していく考えだが、同クラブは市からクラブマネジャー養成講座を受託している。
 商店街の活性化にも一役買う。JR神戸駅前の商店街は新幹線の開通後、賑わいを失っているが、その商店街からスポーツを通じて何とかならないかと相談を持ちかけられた。そこには卓球場もあったので小学生対象の卓球大会を開催すると、約150人の小学生とその親が来場し、数年ぶりに商店街は賑わったという。国際都市神戸だけあって、ベトナム人などの外国人の親子も参加した。震災後、神戸市民のボランティア意識は極めて高い。同クラブのボランティア動員力は数百人におよぶ。弁当代と交通費は一律1000円。商店街は、一切の経費を出さなくてもいいイベントだ。
 商店街の活性化のために、大金を投じてコンサル会社に頼んだが、かんばしくない結果が出たという例は数え切れないほどある。スポーツNPOが商店街の活性化に一役買うとは、新たな発見である。
 震災後のまちづくりのキーワードとして、スポーツに注目した神戸市。ユニスポの新たなかたちが少しずつ姿を現しているようだ。
 
ピクトグラフを中心としたサイン。4カ国語併記。   要所要所に配置された誰でもトイレ
 
【写真左:ピクトグラフを中心としたサイン。4カ国語併記。写真右:要所要所に配置された誰でもトイレ】
 
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スポーツとユニバーサルデザインが出会うまち
 
神戸ウイングスタジアムの見学会には約40人が参加した 取材メモを読み返して、「神戸はユニスポの発信地になるぞ」と確信に近い思いがこみ上げてきた。神戸市は政令市の中で、最もユニバーサルデザインに注力している都市といえるだろう。ユニバーサルデザインのまちづくりを推進する「神戸UD広場」(代表:田中直人摂南大学教授)の活動も活発だ。
 ユニバーサルデザインに関する催しは年間を通じて多数開催される。神戸ウイングスタジアムの見学会とシンポジウムで構成されるユニスポのイベントも、同市で開催される数多いユニバーサルデザインの催しのひとつだ。
 台風の影響で開催当日の早朝まで雨が降り、開催が危ぶまれたが、台風一過、当日には雨は上がっており、神戸ウイングスタジアムの見学会には約40人が参加した。
 シンポジウムの会場となったのは、神戸市の中でも深刻な被害を被った長田区にある「ピフレホール」だ。同区では「長田UD研究会」が活動しており、会長を務める森崎清登さん(近畿タクシー株式会社代表取締役社長)は、ユニバーサルタクシーを全国に展開するユニネットの発起人の1人でもある。
 「する」「見る」「支える」のいずれかで、誰もが参加できるのがユニスポの底流となる考え方だが、このシンポジウムを企画する中心となっていたのが鷲尾真弓さん(神戸市都市計画総局建築技術部技術管理課建築ユニバーサルデザイン係)と糟屋佐紀さん(兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所特別研究員)の2人だ。シンポジウムには台風の影響にもかかわらず約100人の聴衆が来場した。
 震災後、10年が経過し、神戸のまちはめざましい復興を遂げ、新しい地下鉄路線「海岸線」も開通している。シンポジウム終了後の打ち上げは、長田商店街の居酒屋で行われた。
 酒も手伝って、パネリストの1人として参加した山田明仁さん(神戸アスリートタウンクラブ副理事長)らと、「この機会をきっかけにユニバーサルデザインのスポーツイベントをやろう。できれば、震災後10年に当たる来年、被害が著しかった長田区で」と夢を語り合った。
 地方取材を通じて、ハッとさせられるのは、人と人が出会い、情熱と情熱が化学反応を起こして、「夢物語」が実現してしまうことが少なからずあることだ。行政マンであれ、民間人であれ、NPO関係者であれ、その属性にかかわらず、まちづくりを動かすのはそのまちに暮らす人々である。
 酒席での「夢物語」は今、具体性をもって語られはじめた。
【写真:神戸ウイングスタジアムの見学会には約40人が参加した】
 
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スポーツから考えるユニバーサルデザインシンポジウム
 
スポーツから考えるユニバーサルデザインシンポジウム
「する・見る・支える―共に楽しむ ユニバーサルなまち・建物をつくる」
〜スポーツを通じて実現する共働と共創〜
  • 開催:平成16年10月9日(土)
  • 見学会の部 10:00〜11:00 神戸ウイングスタジアム施設見学
    (定員:50名 会場:神戸ウイングスタジアム)

  • 講演・シンポジウムの部 13:30〜16:30
    (定員:300名 会場:新長田勤労市民センター別館ピフレホール)
  1. 基調講演(敬称略)
    『スポーツにおけるユニバーサルデザインとは』
    *講師*
    北岡敏信(ユニバーサルデザインコンソーシアム主任研究員)
    <ユニバーサルデザインコンソーシアム主任研究員。20代はスポーツジャーナリストとして『サッカーダイジェスト』『ナンバー』等に執筆。
    その後、パリを起点に南ヨーロッパの都市を幅広く取材し、現在はUDの視点で、市町村の動向やユニスポ(ユニバーサルデザイン・スポーツ)について精力的に取材している。著書に『ユニバーサルデザイン解体新書』(明石書店)等がある。>

  2. シンポジウム(敬称略)
    『スポーツを通してつくる「まち」と「交流」-SPORTS FOR ALL』
    *コーディネーター*
    田中直人(摂南大学工学部教授)
    *パネラー*
    北岡敏信
    辻 一(日本車いすテニス協会副会長)
    山田明仁(NPO法人神戸アスリートタウンクラブ副理事長)
    西村忠英(株式会社アシックススポーツアパレル事業部)
 
障害のある当事者も初めてのスタジアムに興味津々   シンポジウム会場の展示コーナーで紹介されたUDの水着(アシックス)
 
【写真左:障害のある当事者も初めてのスタジアムに興味津々、写真右:シンポジウム会場の展示コーナーで紹介されたUDの水着(アシックス)】
 
シンポジウムが開催された長田区では、区単独のUD研究会が活動している   シンポジウムではさまざまな視点で、「スポーツのUD」が語られた
 
【写真左:シンポジウムが開催された長田区では、区単独のUD研究会が活動している、写真右:シンポジウムではさまざまな視点で、「スポーツのUD」が語られた】
 
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