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ユニバーサルデザインとは?
 
2.ユニバーサルデザインの事例と動向
 
#28 米国のUD教育(1)
 
 米国では国家がUDの研究機関に対して資金提供を行っています。財政援助の総額は年間約100万ドルと大規模なものです。
(詳細は本誌06号、UDC主任研究員 曽川大)
年間約100万ドルの財政援助
文化芸術活動のUD化を推進
アダプティブ・エンバイロメンツ・センター
アイデアセンター
センター・フォー・ユニバーサルデザイン
NIDRR国立障害・リハビリテーション研究所
トレースR&Dセンター
年間約100万ドルの財政援助
 
カナダでは統合教育が盛ん。障害のあるなしにかかわらず、身体を動かす子どもたち ユニバーサルデザインの普及啓蒙には教育や研究が重要であるとの認識から、教育省の機関であるNIDRR(国立障害&リハビリテーション研究所・通称ナイダー)は同研究所の5カ年計画(1999年〜2004年)にユニバーサルデザインを掲げている。障害は物理的環境のみならず社会や文化、人々の意識によって克服すべきものとするユニバーサルデザインの考え方が、機会均等な社会をつくる重要な思想的基盤となるからだ。
 ナイダーは実際の研究活動を行う14の機関をRERC(リハビリテーション工学研究所)として認定し、プロジェクトベースでの資金提供を実施している。
 RERCは研究者や産業界、ときにはロビイストとも協働して製品開発や環境開発、政策立案の支援を行う。RERCは研究成果の公表にも熱心で、印刷物やWebサイト、スライド集、CD-ROM、ビデオ、ワークショップ等を通じて情報発信に力を注いでいる。
 代表的な機関には、建築環境を研究するニューヨーク州立大学バッファロー校のIDEAセンターやノースカロライナ州立大学のセンター・フォー・ユニバーサルデザイン、情報通信技術を研究するウィスコンシン大学マディソン校のトレースR&D センターなどがある。
 こうした機関は一定の研究テーマのもと、5年間契約で年間90万〜130万ドルの資金援助をナイダーから受けている。活動費の8〜9割の財源を占めるため、ナイダーの存在意義は大きい。ただし、ナイダーは行政指導のような強いリーダーシップを取るスタンスは取っていない。プロジェクトを立案・推進するのは、あくまでも個々の研究機関である。
【写真:カナダでは統合教育が盛ん。障害のあるなしにかかわらず、身体を動かす子どもたち】
 
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文化芸術活動のUD化を推進
 
 NEA(国立芸術基金)は主に舞台芸術や視覚芸術を支援する団体であるが、文化活動すべてがアクセシブルでなければならないとの観点から「リーダーシップ基金」を設けて、ユニバーサルデザインにもとづく文化活動を実施する機関に対して財政援助を行っている。
 これを受けて、アダプティブ・エンバイロメンツ・センターは昨年より、「アクセスデザインプロフェッショナル」を開始した。これは故ロナルド・メイス氏の遺志を引き継ぐプロジェクトで、障害をもつ人々自身がデザイナーやデザイン教育者、団体のリーダーとして活躍できるような教育プログラムを実施するものである。また、NEAはユニバーサルデザインの意識啓発のために、ユニバーサルデザイナーズ&コンサルタンツ社やセンター・フォー・ユニバーサルデザインに資金提供を行い、製品や建築・自然環境におけるユニバーサルデザインの優秀事例を公募。審査を通過した事例をスライドやCD-ROMにまとめて発表している。第1弾のスライド集に続き、第2弾のCD-ROMが今年8月に発売された。
 一方、同じく文化活動の推進母体であるスミソニアン・インスティチュートも美術館や博物館でのアクセシブルな展示やサービスでユニバーサルデザインを実践している。1998年11月17日〜1999年3月21日にはスミソニアンの一画であるニューヨーク市内のクーパーヒューイット・ナショナルデザイン美術館で世界初のユニバーサルデザイン展となるUnlimited by Design(制限しないデザイン)が企画された。150企業の協力のもと、日用品からオフィス家具、コンピュータ製品、ガーデニング用品、キッチン、遊具まで約300の製品が展示された。同展覧会は現在カナダで展示中で、来年からは全米5都市で巡回が予定されている。
 インターネットを利用した教育や普及活動が効果的なため、この分野でのアクセシビリティ化も活発だ。
 国立アクセシブルメディアセンターでは、Webをふくむすべてのメディアを対象に研究を進めており、アクセシブルなWebサイトには地球マークの認定を授けている。W3CはWebの共通プロトコルを開発するために1994年に設立されたコンソーシアムで、Webデザインのアクセシビリティガイドを作成した。そこでは、画像イメージに付属するテキストやオーディオファイルに付属するキャプションを奨励している。
 
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アダプティブ・エンバイロメンツ・センター
 
Adaptive Environments Center
 1978年に障害をもつ人や高齢者のための建築環境改善に取り組むNPOとしてイレーン・オストロフ氏らによって発足された。
 
アダプティブ・エンバイロメンツ・センターのオフィス   ユニバーサルデザイン教育プロジェクトのディレクターとして企画プロセスを説明するアダプティブ・エンバイロメンツ・センターのイレーン・オストロフ氏
 
【写真左:アダプティブ・エンバイロメンツ・センターのオフィス、写真右:ユニバーサルデザイン教育プロジェクトのディレクターとして企画プロセスを説明するアダプティブ・エンバイロメンツ・センターのイレーン・オストロフ氏】
 
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アイデアセンター
 
Center for Inclusive Design & Environmental Access
 ニューヨーク州立大学バッファロー校建築学部に付属し、建築環境と製品のユニバーサルデザインの研究機関で委託研究や製品開発、情報発信を行う。
 
IDEAセンター所長のエドワード・スタインフェルド氏
 
【写真:IDEAセンター所長のエドワード・スタインフェルド氏】
 
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センター・フォー・ユニバーサルデザイン
 
Center for Universal Design
 1989年にナイダーの補助金でセンター・フォー・アクセシブルハウジングとして設立。故ロナルド・メイスの指導により住宅のユニバーサルデザインで先駆的な役割を果たす。
 
CUDが開発したユニバーサルな浴室   CUDが開発したユニバーサルな洗面台
 
【写真左:CUDが開発したユニバーサルな浴室、写真右:CUDが開発したユニバーサルな洗面台】
 
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NIDRR国立障害・リハビリテーション研究所
 
National Institute on Disability and Rehabilitation Research
 米国の障害者人口は約5200万人にのぼり、障害者対策は重要課題の1つである。ナイダーは米国教育省特殊教育・リハビリテーションサービス局内の1部門で、障害者の自立生活を支援する目的で1978年に設立された。
 
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トレースR&Dセンター
 
Trace R&D Center
 1971年にウイスコンシン州立大学マディソン校の付属研究機関として、情報通信分野のアクセシビリティ改善を目的に開設された。現在の主な活動は障害をもつ人にとって使いやすい情報通信技術およびテレコミュニケーションシステムの標準化で、ナイダーから研究資金を調達している。
 
ノキアの電話。ネックループと補聴器の誘電回路を接続する
 
【写真:ノキアの電話。ネックループと補聴器の誘電回路を接続する】
 
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