21世紀の社会システムをデザインする「ユニバーサルデザイン・コンソーシウム」  
UDCユニバーサルデザイン・コンソーシウム
 
ユニバーサルデザインとは? トピックス
UDCのご案内 リンク集
 
サイトマップ
 
ヘルプ/FAQ
 
お問い合わせ
 
ホーム
 
ホームユニバーサルデザインとは?ユニバーサルデザインの事例と動向 > #25
 
ユニバーサルデザインとは?
UDCのご案内
トピックス
リンク集
季刊ユニバーサルデザイン
 
ユニバーサルデザインとは?
 
2.ユニバーサルデザインの事例と動向
 
#25 スポーツイベントとユニバーサルデザイン
 
 スポーツのユニバーサルデザインとは何か。日本中が熱狂したサッカーW杯、東京の都心を駆け抜けた東京シティロードレースなどのスポーツイベントを通じて、スポーツがもつ根元的なユニバーサリティを探ってみました。(北岡敏信 UDC主任研究員、本誌11号)
W杯は人種や国籍を越えた フットボール狂のお祭り
W杯もオリンピックもボランティアの存在抜きに語れない
日比谷公園から国立競技場 都心を駆け抜ける10kmレース
ウォーキングにパークゴルフ 結果としてユニスポだ
W杯は人種や国籍を越えた フットボール狂のお祭り
 
ゴールシーンでは大挙して訪れたアイルランド人サポーターが雄叫びを上げる 横浜国際総合競技場、午後9時。目前で展開されるサッカーW杯のアイルランド対サウジアラビア戦は、後者の1次リーグ敗退が決まっているにもかかわらず、スタジアムの熱気は沸騰点に達しようとしていた。
 車いす席に目をやると、親子連れ、カップル、東京ヴェルディ1969(Jリーグ)のユニフォームを着た根っからのサッカー好きなど、さまざまな人々が試合を楽しんでいる。ちなみに車いす席のチケット1枚につき、介助者1人の同行が許される。スタンドはアイルランドのシンボルカラー「緑」一色だ。ヨーロッパのお荷物といわれたアイルランドも、経済特区により奇跡的な経済発展を遂げたことにより、極東までのW杯観戦ツアーを楽しめる経済的な余裕のある人が増えたのだろう。
 試合はアイルランドの一方的なペースで進み、ハーフタイムを迎えた。ギネスビールの国とあって、ビール好きが多い。会場でギネスは販売されていなくても、ビール売り場には長蛇の列ができる。ビール片手のアイルランド人の中には、車いすで大陸を横断したと思われるサポーターもいる。車いす席では、アイルランド人と日本人が笑顔で記念撮影中だ。
 フットボール狂のお祭り。そこでは、多様な人々がスポーツの「見る」楽しみに全身を浸らせていた。スポーツがもつ根元的なユニバーサリティを実感できた瞬間である。
「能書きいってないで、スポーツはもともとユニバーサルさ」。顔見知りのスポーツ・ジャーナリストの嘲笑は的を射ていた。W杯のチケット入手問題だけが、ユニバーサリティを欠いていた。
【写真:ゴールシーンでは大挙して訪れたアイルランド人サポーターが雄叫びを上げる】
 
▲ページのトップへ戻る
 
W杯もオリンピックもボランティアの存在抜きに語れない
 
 スポーツは人類の誕生とともに生まれたといわれている。しかし、例えば古代のボクシングの勝敗がどちらかの死によって決まったといわれるように、そのありようは現在のそれとはあまりにも異なる。
 近代スポーツの原形がつくられたのは産業革命期のイギリスにおいてで、その後スポーツは社会的階層や国境、性別を越えて普及していく。最初は「する」だけだった楽しみ方も、やがて「見る」、そして「支える」と広がった。横浜国際総合競技場に隣接して、設備の面においても、プログラムの面においても、日本有数の障害者スポーツセンターといわれる「横浜ラポール」がある。同センターを拠点とする電動車いすサッカーのチームでボランティアとしてコーチをしているのがサッカーのユニバーサルデザインを提唱する高木カズ氏だ。彼がスポーツ・ボランティアに関わるようになったのは、イギリス滞在が影響している。
 「今も昔も福祉には興味がないただのサッカー好き。イギリスのように、誰もがサッカーを楽しめるようにならなくてはと思ったのが、ボランティアを始めた動機です」
 彼は決勝戦のブラジル対ドイツ戦も含めて、横浜国際総合競技場で開催された全試合に横浜市のボランティアとして関わった。ボランティアの仕事は案内などが多いので、試合を観戦している暇はない。それが熱狂的なサッカーファンの彼にとって、いちばんの悩みだったという。
 阪神大震災を契機として、自己実現のためにボランティアをする多数の市民が日本にも現れるようになった。今ではスポーツイベントの運営も、ボランティアの存在抜きには語れない。W杯にしろ、オリンピックにしろ、国民体育大会にしろ、大型スポーツイベントはボランティアに支えられている。長野オリンピック冬季競技大会では約3万人、高知よさこいピック(第2回全国障害者スポーツ大会)では約4,000人のボランティアが大会運営を支えた。
 
キックオフ1時間前には早くも人、人、人の波   障害のあるなしにかかわらず、いっしょに駆け抜ける
 
【写真左:キックオフ1時間前には早くも人、人、人の波、写真右:障害のあるなしにかかわらず、いっしょに駆け抜ける】
 
▲ページのトップへ戻る
 
日比谷公園から国立競技場 都心を駆け抜ける10kmレース
 
 東京シティロードレースは日比谷交差点をスタートし、ゴール地点は国立競技場、東京のど真ん中を駆ける10kmの市民ランナー憧れのコースである。
 このレースのモデルとなったのはニューヨーク・シティマラソン。約20年前、交通事故で片足を失ったディック・トラウムという男が、障害をもつ人として初めてニューヨーク・シティマラソンのゴールを踏んだ。以来、障害のある人の参加が少しずつ増え、今では日本からの参加者も少なくないという。
 日比谷交差点から2kmの地点でレースを見守っていると、最初に駆け抜けていったのは車いすのランナーだ。皇居を観光に訪れた外国人も、興味深そうにシャッターを押す。日常的に車いすマラソンに励んでいるアスリートのタイムは、障害のないアスリートのそれよりはるかに速い。このレースのタイムを比較すると、一般男子の最高タイムが32分56秒で、車いすの部男子のそれは23分29秒。
 同レースには一般の部、車いすの部の他、視覚障害者、知的障害者、移植者の部が設けられている。視覚障害者の伴走者には女子マラソンの増田明美氏、有森祐子氏などの顔が並ぶ。競技用の3輪タイプの車いすではなく、いつも使っている車いすでそのまま参加した強者もいる。外国人もいる。障害のあるなしにかかわらず、さまざまな人が同じコースを走るこのレースには、ユニバーサルデザインのスピリッツが生かされていた。
 スタートから約2時間30分。ゴール地点の国立競技場では、すでに表彰式が行われていた。そのとき、普通の車いすに乗った最終ランナーが両側をボランティアに誘導されながら、ゴールへと向かい、すべての視線は彼に注がれる。
 一瞬の静寂、そして万雷の拍手。場数を踏んだスポーツ・フォトグラファーが、目を赤く腫らしながら、シャッターを切っている。
 ロサンゼルス・オリンピックの女子マラソンの最終ランナー、アンデルセン選手が脱水症状でふらふらになりながらも走り続けたことで賞賛を受けたように、彼もまた観衆に希望と勇気を与えながら完走した。
 
「東京シティロードレース」は多数のボランティアに支えられている   車いすランナーの平均走破タイムは、障害のない人を上回るのが普通だ
 
【写真左:「東京シティロードレース」は多数のボランティアに支えられている、写真右:車いすランナーの平均走破タイムは、障害のない人を上回るのが普通だ】
 
▲ページのトップへ戻る
 
ウォーキングにパークゴルフ 結果としてユニスポだ
 
 自動ドアがユニバーサルデザインを意識せずに生まれたように、スポーツの分野でも結果として、ユニバーサルデザインが生かされている例はある。「スポーツによるまちづくり全国自治体サミット」への参加経験をもつほとんどの自治体は、ユニスポを実践しているといってもいいだろう。
 2000年に行われた第2回大会で出された「ひがしまつやま宣言」では、「スポーツを通じて、若い人からお年寄りまで、また障害のあるなしにかかわらず、だれでも共に楽しめるまちづくりに努めます」と明記されている。
 この宣言が出された埼玉県東松山市は、「全国スリーデーズ・マーチ」が開催されるウォーキングのメッカである。最初はマニアだけが参加する数千人規模の大会が、回を重ねるうちに延べ8万人が参加するビッグイベントに成長。大会は3カ日開催されるが、市内の小中学生は3日のうち1日全員が参加し、市職員は部署に関係なく全員参加する。まち総ぐるみで取り組むことで、地域に一体感が生まれるという。
 体力に応じて誰もが参加できるように10kmから30kmの長短数種のコースが設けられており、高齢者や小児、障害のある人も参加しやすい「ゆっくりウォーク」も設けられている。同市ではウォーキング・ロードが整備されているし、ウォーキングの情報を提供するウォーキング・センターも設けられており、ここには全国でただ一人のウォーキング推進係長が勤めている。
 新しいスポーツを独自に考案し、スポーツによるまちづくりを行っているのが北海道・幕別町。素晴らしい公園がありながら、あまり利用されていなかったので、有効活用を考えて、生み出されたのがパークゴルフである。用具はまちの合板会社、ホールはまちの鉄工所、指導は住民組織の協会が受け持ち、パートナーシップで「コミュニティ・スポーツ」というカタチのないものに挑戦したわけだ。ここにはパークゴルフ推進係長という役職の人がいる。
 ここにあげたのは数例にすぎないが、スポーツをまちづくりの貴重なソフトとしてとらえている自治体は枚挙にいとまがない。障害のあるなしに関係なく、スポーツを楽しもうという動きも少しずつ出てきている。
 東京の神宮外苑では「スポーツフェスタ」と銘打って、毎年、障害のあるなしにかかわらず楽しめるペタンクなどのニュースポーツが紹介されているし、地域に根ざしたスポーツ振興を掲げるサッカーのJリーグ百年構想でも、障害のある人のスポーツ振興も視野に入れている。元日本代表の北沢豪選手をはじめとするJリーガーはすでにカンボジアの子どもたちにサッカーを教えるなど、積極的にボランティア活動に従事。昨年開催された「INAS-FED知的障害者サッカー世界選手権」は、ユニバーサル・スポーツイベントとして開催されたし、今年静岡県で行われる国民体育大会と全国障害者スポーツ大会も、ユニバーサルデザインのスポーツイベントとして位置づけられている。
 ユニバーサルデザインと銘打っているかはともかく、障害のバリアを越えるユニスポの流れは少しずつ勢いを増していきそうだ。
 
充実の笑顔が弾ける視覚障害者と伴走者のゴールシーン(国立競技場)   バスケットボール 車いすバスケットボールは少年漫画誌に連載されたこともあり、子どもたちに人気だ。昨年、北九州市で開催された世界選手権「ゴールドカップ」には、過去最高の約8万人の観客を集めた。重度障害者もプレイできるように、低い位置にも籠を設けたツイン・バスケットボールも開発されている
 
【写真左:充実の笑顔が弾ける視覚障害者と伴走者のゴールシーン(国立競技場)、写真右:バスケットボール 車いすバスケットボールは少年漫画誌に連載されたこともあり、子どもたちに人気だ。昨年、北九州市で開催された世界選手権「ゴールドカップ」には、過去最高の約8万人の観客を集めた。重度障害者もプレイできるように、低い位置にも籠を設けたツイン・バスケットボールも開発されている】
 
▲ページのトップへ戻る
 
個人情報保護方針ご利用規約
 
All Rights Reserved, Copyright (C) 1999-2005, universal design consortium, G×K Co.,Ltd