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#24 プロダクトのユニバーサルデザイン-3 住宅設備機器 |
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プロダクトのユニバーサルデザインの領域は幅広い。これまで、「日用雑貨」、「家電製品」を取り上げてきましたが、今回は住宅設備機器にフォーカスを当てて紹介します。高齢化が進む今、住宅のユニバーサルデザインは焦眉の急と言えるでしょう。(詳細はユニバーサルデザイン誌09号)
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住宅設備機器は家族みんなが使いやすいもの
既存の住宅に簡単に設置できるかが課題
健康なうちから将来計画を考えることがUD的発想になる
実験プロジェクトからスタートしたバリアフリー仕様のキッチン
消費者ニーズへの気づき
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住宅設備機器は家族みんなが使いやすいもの |
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住宅設備機器は、排泄や入浴(トイレ、浴室)、着替え・洗濯・身繕い(洗面化粧室)、食事・団らん(キッチン)など、「衣食住」のなかでも、すべてに密接に関わるものといえよう。
ただし、それを使うのは1人ではない。家族と共用するものが大半であり、多くの商品は「家族みんなが使いやすい」というキーワードが大きな視点となっており、パーソナルユースの商品設計ではないものがほとんど。また、家自体のつくりや施工の精度により、特長が生かし切れないケースも出てくることから、販売される商品は半製品という位置づけがなされることも住宅設備機器ならではの特長といえる。
【写真:「サティスシャワートイレ」これまでの大便器の多くにセットされていたロータンクと呼ばれる手洗い用のタンク部をなくし、トイレ内の動作スペースを35%も広げることに成功。これにより手すりの設置や介助の際のスペースアップにもつながった(INAX)】
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【図:「高齢者が感じる住宅の構造・設備上の支障」抜群】
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既存の住宅に簡単に設置できるかが課題 |
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住まいのバリアフリー化の1つとして、ホームエレベーターが注目されている。足腰が弱い、障害があるから必要という以外に、最近では荷物運びがラクという、誰にとっても便利である点に需要の高まりがあるようだ。市場の傾向について、三菱日立ホームエレベーター株式会社に聞いてみた。
「持家住宅の着工戸数は減少し続けていますが、ホームエレベーターの設置台数は順調に増加しています。2001年度の業界の総需要は1万台を超える見込み」と営業本部の須藤孝朋氏。
ホームエレベーターは、設置場所が個人住宅に限られるため、既存の住宅では大掛かりな建築工事や法的な手続きが必要になり、設置したくても実現できないケースもあるという。
「高齢者市場や障害者市場に対応するためには、既存の住宅に簡単に取り付けられる製品開発や、法的な規制の緩和等が必要。それが課題です」(須藤孝朋 営業本部)
最近では、手軽なホームエレベーター相当の製品を…という公共施設などからの要望が多く、小規模建物向けの小型エレベーターを医院や診療所、寺院、教会、介護・老人ホーム、福祉施設などへ設置するケースが増えているそうだ。
【写真:「スイ〜とホーム ファミリー」両手がふさがっていても見やすく押しやすい大型押しボタン、さらに子どもから高齢者まで無理なく届く位置(床面から1mの高さ)にボタン類を配置している。敷居の隙間は15mmで車イスのキャスターが挟まりにくい構造で、最新の制御により段差の発生を抑えている。写真は3人乗りタイプ(三菱日立ホームエレベーター)】
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【グラフ:ホームエレベーターの主な設置先となる持家住宅の着工戸数は減少を続けているが、設置台数は順調に増加している】
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健康なうちから将来計画を考えることがUD的発想になる |
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1999年の総務庁の調査結果をみると、浴室、トイレはいかに使いやすく、安全な仕上げにするかが住宅設備メーカーの課題の1つとなっている。いずれも介助がある程度必要な人でも使う際はできることなら、介助されずに用を済ませたいスペースである。つまり自立を支援できる商品設計が求められる。
株式会社INAXの「ビバーチェ・i-bath(あいばす)」は、バリアフリー設計を随所にちりばめたユニット型の浴室として、順調に売り上げを伸ばしている。
「あいばすは入浴シーンでのさまざまな動作を考慮し、段差や間口などのバリアはもちろん、お掃除のストレスという精神的バリアも解消してくれる“あい”がいっぱいつまったバスルームです。浴室に入るときにはじまり、身体を洗うとき、浴槽に入るとき、入浴中、立ち上がるときなど、ラクに安心して動けることが転倒事故などを未然に防ぐことにつながります」(山形美紀 経営企画部広報室)
住宅設備機器は一生の間に何度も取り替えることはできない。それゆえに健康なうちから将来を見据え、介助のしやすい浴室を選んでおくことが、ユニバーサルデザインの考えに通じるものだという。
「住み慣れた家で長く暮らしていただきたい」というのが同社の基本的なコンセプト。浴室に限らず、トイレや洗面化粧室など、水まわり全般のUDの基本的な方向として捉えているようだ。
【写真:「ビバーチェ・i-bath(あいばす)」段差は3mm以下、片手でワンタッチ操作のスイッチシャワー、ラクな姿勢で身体が洗える洗面器台、姿勢保持や浴槽への出入りをサポートする各種握りバー、身体状況に応じて選べる各種ドアなど、随所にバリアフリー設計がみられる(INAX)】
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実験プロジェクトからスタートしたバリアフリー仕様のキッチン |
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サンウエーブ工業株式会社は、1980年から当時の通産省の「新住宅開発プロジェクト」に参加し、バリアフリー仕様のキッチンづくりに取り組んできており、いち早く高齢者等に対応できるキッチンを市場に投入し始めたキッチン専業メーカーである。
「バリアフリー仕様のキッチンは、当時、実験的なプロジェクトという色が濃かったものですから、採算性は度外視してつくっていました。はっきりいって売りにくい商品であったことは事実ですが、いまでは車イスの方から足腰の衰えた方までを含めた使いやすいキッチンの1シリーズとして定着しています」(玉井彰 総務・人事部広報担当部長)
この「ウエルライフキッチン」は、1cm刻みで13種類を用意した天板トップの高さ調整や片手で操作可能なシングルレバー&シャワー水栓など、当時としては画期的な仕様だった。
現在では実験的な要素からスタートしたキッチンのバリアフリー設計のノウハウが各シリーズに反映されており、使う人の身体状況やキッチンワークスタイルに応じて商品が選べる。
玉井氏は「ロングライフキッチンと名付けた製品もあります。いつまでも使いやすいキッチン設計は、ユニバーサルデザインの視点と共通するものではないでしょうか」と語る。
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【写真左:「ウエルライフキッチン」1cm刻みで13種類を用意した天板トップの高さ調整や片手で操作可能なシングルレバー&シャワー水栓、ガスを点火すると自動運転するファン、座ったままでも出し入れのしやすい斜めカットの収納棚、キャスター付きの下部収納などが特長(サンウエーブ工業)、写真右:車イスに座りながらのキッチン作業を想定した「ウエルライフキッチン」】
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