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#17 プロダクトのユニバーサルデザイン-1 |
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『ユニバーサルデザイン』誌では08号、09号の2回連続でプロダクトデザインに焦点を当てた特集を組みました。第1回ではマクロ経済的に、第2回では市場に出回るUD製品そのものにフォーカスを当て、“鳥の目”と“虫の目”でUDプロダクトの今を精力的に取材。今回はその中で、食器、文房具など、身の回り品のUDを紹介します。
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福祉ショップで売られていたスプーンがデパートのUDコーナーに
営業マンがセールストークで“ユニバーサルデザイン”を強調
通常の4倍のスピードで売れた腕時計「MU(ミュー)」
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福祉ショップで売られていたスプーンがデパートのUDコーナーに |
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いくつかの大手デパートやスーパーの店舗には、ユニバーサルデザイン・コーナーが設けられている。そこにはさまざまな生活用品が並べられているが、企業のユニバーサルデザインへの取り組み姿勢は千差万別だ。
中には限られた対象者をターゲットとしているのに、ユニバーサルデザイン商品として高く評価される製品を送り出している企業もある。(株)青芳製作所もその1つだ。病院や施設向けに同社が開発したスプーンは軽くて、もちやすいことで、ユニバーサルデザイン製品とみなされている。
「障害のある人に向けてのデザインが、結果的に障害のない人にも使いやすいというおまけがついてきた」と秋元幸平常務取締役は苦笑する。
これは専用品の一般製品化の一例である。究極の使いやすさを追求したことで、障害のない人にまでユーザーは広がった。
「いままで福祉ショップでしか販売されていなかったので、本当に欲しい人の手に渡っていたか不安があった。しかしデパートで、多くの人の目に触れる機会が広がり、本当に喜んでいる」
結果としてのユニバーサルデザインが、販路拡大につながったわけだ。
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【写真左:「ライトシリーズ」重い、大きい、食べにくいなどの問題点を医学的、人間工学的、デザイン的に検討を加えて、モニタリングを繰り返してできあがったスプーン。見た目が良いからとか、昔からこの形だからなどの固定観念を排して、究極の使いやすさを追求した(青芳製作所)、写真右:「楽々箸」片麻痺の人向けに開発された箸。クリップを付けたことにより、左右どちらの手で、どんなふうに握っても、箸の先がきちっと合うので、食べ物を口に運ぶ途中で落としてしまう心配がなくなった。箸を使い慣れていない外国人のユーザーにも好評(青芳製作所)】
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営業マンがセールストークで“ユニバーサルデザイン”を強調 |
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最初からユニバーサルデザインを事業展開の基本的な考え方に置いて、既存の商品のすべてをユニバーサルデザイン化する動きもある。将来の人口動態の変化をにらめば、より幅広いユーザーに訴求できるユニバーサルデザインのコンセプトがビジネスになるからだ。
コクヨ(株)では、ハサミなどの文具製品を2003年までに、ユニバーサルデザイン商品に切り換えて全19アイテム、103品番をラインアップする。すでに多数の商品が店頭に出ているが、当初の売上目標はクリアしているという。
「他社との差別化という意味でも、ユニバーサルデザインはセールスポイントになる。いまでも営業マンがセールス・トークに使っているし、これからもユニバーサルデザインを全面的に打ち出していく」(高部直樹 マーケティング部)
同社でまとめたユニバーサルデザインの要件の中で、注目すべきは「従来品と比較して遜色ない価格設定にする」の項だ。すでに市場に出ている商品は、従来品と比べて同価格のものもあるし、最高でも8割高で、2倍までには至っていない。
「できる限り最大限の人が快適・安全に使用できる設計仕様・デザインと口でいっても、実際には完璧にいかないことが多い。現状に満足せずに、少しでも高めていこうとする姿勢や考え方も、ユニバーサルデザインとしてとらえている」(岩津博文 マーケティング部商品企画グループリーダー)
同社はテレビCMでも、ユニバーサルデザインを打ち出していることでもわかるように、ユニバーサルデザインをプロモーションの中心に置いている。
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【写真左:「プニョプニョピン」ネーミングに表れているように、柔らかな感触のプラスティックリングで針部分をカバーした画鋲。指に針が触れにくい設計なので、小さな子どもが使うときでも安心だ。視覚に障害のある人も、恐怖心をもたずに使うことができる(コクヨ)、写真右:「ハサミ」 2枚の刃にバネを組み合わせたハサミ。バネの力で、「切る」、「開く」の動作をサポートするので、従来品に比べて疲れが少ない。2本ぐらい指が入るハンドルの形状は、大きな手にも小さな手にもフィットしてもちやすい(コクヨ)】
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通常の4倍のスピードで売れた腕時計「MU(ミュー)」 |
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ユニバーサルデザインのヒット商品もすでに生まれている。シチズン時計(株)が2001年4月に販売を開始した腕時計「MU(ミュー)」の売上スピードは通常の約4倍だという。見やすさ、使いやすさをユニバーサルデザインで見直したことにより、目標をはるかに超える成果を得たといえる。具体的には視認性、操作性、装着性、安全性に配慮して、配色、文字盤の大きさ、フォント、リューズの位置などを検討した。
それと同時に「おしゃれだから、かっこいいから」と購入していく顧客が少なくないことでもわかるように、デザインそれ自体の美しさも見逃せない。
「顧客は圧倒的に65歳以上を中心にしたエルダー層だが、ファッション売場で購入するヤングユーザーも2割ぐらい占める」(宮沢利仁 広報室課長)
ユニバーサルデザインに注力することにより、波及効果も出ている。
「ユニバーサルデザインがメディアのニュースソースとして旬なので、MUというブランドと相まってシチズンのメーカー名も露出し、企業のイメージアップに大いに貢献した」
ここではアプローチの異なる3つの企業にフォーカスを当てたが、時代の潮流に敏感な多数の企業が、温度差はあれ、ユニバーデザインにすでに取り組んでいる。
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【写真左:「MU(ミュー)」大きめな文字面、UDフォントなどで視認性を高め、大きなリューズで操作性に配慮。装着性を考えて、手の当たりにくい位置にリューズを配置した。安全性を考慮して、アレルギーに対応するニッケルのメタルバンドを採用(シチズン時計)、写真右:「写ルンですエクセレント」あらゆる人の使いやすさを追求したという、見やすい大型ファインダーに握りやすいグリップ。操作しやすいスイッチ類と自動で切り替わる絞り、センサーフラッシュ付き。本体はリサイクルされる(富士写真フィルム)】
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