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#16 日本初のUD公園「ふれあいの庭」 |
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− 情報コミュニケーションにおけるユニバーサルデザインの考え方とパッケージデザインでの実践 − |
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曽川 大/ユニバーサルデザイン・コンソーシアム研究員 |
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「交通バリアフリー法」の影響もあって、広場、道路などのUD化が注目を集めているが、外部空間で最初にUDが実現されたのは公園においてである。「ふれあいの庭」は大阪府営大泉緑地の一角にある面積0.2haほどの小さな花園。誰もが、五感を通じて、憩いや安らぎを感じることができるようにUDを基本コンセプトとして設計された。
【写真:ふれあいの庭は大泉緑地のなかにある0.2haの小さな花園】
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ユーザーニーズを徹底的に集積する
五感をフルに活用した公園づくり(1)
五感をフルに活用した公園づくり(2)
写真(1)
写真(2)
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ユーザーニーズを徹底的に集積する |
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“ふれあいの庭”はわが国ではじめて、最初からユニバーサルデザインを基本コンセプトとして造られた公園である。誰もが五感(音、香り、色、感触、味)を通じて、憩いや安らぎを感じることができる空間だ。草花の色彩や香り、水の音や感触を楽しむことができるように配慮されている。大阪府営大泉緑地の一角に1997年、オープン。面積0.2ha。事業費3億円。
大阪府はできるだけ多くの人に公園を利用してもらうために、1970年代から府営公園に“盲人コーナー”を設置するなどの対策を講じてきており、そのような一連の施策のなかで、「ハートフルパーク実施計画」が1993年に策定された。同計画の立案過程で、内外の事例を徹底的に調査したリポートを作成。そのなかでユニバーサルデザインにスポットが当たり、それが“ふれあいの庭”が生まれる端緒となった。
設計に当たっては、ユーザーニーズを的確に集積するために、障害の部位や年齢の異なるさまざまな人々に対して、これまでにないほどきめ細かなヒアリングが実施された。豊富なヒアリングの成果は、デザインに巧みに取り入れられている。
設計者は、日本におけるユニバーサルデザインの公園づくりのパイオニアである三宅祥介氏(SEN環境設計室)である。
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【写真左:大泉緑地・敷地図、写真右:ふれあいの庭・施設平面図】
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五感をフルに活用した公園づくり(1) |
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施設全体を左記の5つのゾーンに分けて、それぞれに特徴をもたせている。
- エントランスゾーン
園内の幹線道路に面して花壇を配し、庭園の雰囲気、親しみやすさ、入り口のわかりやすさを表現。視覚障害者に対しては、触知案内板や音声案内により、利用法を伝える。
- キッチンの庭
ハーブ、野菜など味覚に関する植物を集めた季節感のあるゾーン。実際に花や葉、実に触れて楽しむことができる。
- 香りの庭
ハーブを中心に、香りのする植物を集めて、香りにより、安らぎや季節感、爽快感を感じられるようにしたコーナー。
- 色の庭
階段状のボーダー花壇に、四季の彩り豊かな草花が植えられている。生け垣や芝生と調和するように配色されており、目で楽しむことができる。
- 音の庭
修景池の水や水性植物に触れたり、壁泉や水琴窟の水の音を聴いたりして、音によるふれあいを楽しむ演出をする。
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【図:五感をフルに活用するための仕掛け】
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【表:障害のある人への配慮】
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五感をフルに活用した公園づくり(2) |
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管理運営面では、ソフトプログラムの開発(野外活動、公園案内)の一環として、“ヒーリングデザイナー”と名付けた府民のボランティアを活用している。
“ヒーリングガーデナー”は、高齢者や障害のある人が公園で花や緑を楽しみ、生きがいを感じてもらうためのプログラムづくりやサポートを行う。
ヒーリングデザイナー1期生は、服部緑地都市緑化植物園で、来園者に対する公園案内や社会福祉施設の人々を招待して、野外活動などの実地訓練を重ねている。
ヒーリングガーデナーの募集概要は以下の通り。
- 半年間の養成講座の修了を原則とする。
- 修了生は、その後、約1年間の実地 訓練を兼ねて府営公園等(主に大泉緑地)の同種のボランティア活動に協力してもらう。
- 実地訓練後は、(財)大阪府公園協会がサポートする「ヒーリングガーデナークラブ」に所属し、高齢者や障害のある人が障害のない人と共に楽しめる公園づくりのためのプログラムを実施する核として働いてもらう。
ユニバーサルな公園を造っても、運営・管理予算が少ないために、施設が十分に機能していないという例もある。地方財政が逼迫している今日、施設をスムーズに運営していくためには、ボランティアの戦力化は欠かせない。
「高齢者や障害のある人にとって、公園が生きがいを感じる場所となるためには、単にそこに行けるから、そこに行きたいという目的の場所でなければならない」(大阪府南部公園事務所)
公園を目的の場所とするためには、そこで展開されるソフトプログラム(野外活動、公園案内など)が重要で、ヒーリングガーデナーはその担い手となる。
園芸ブームを反映してか、さらには高齢社会を反映してか、募集定員の数倍の応募があるという。
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写真(1) |
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【写真左:レイズドベッド(車イスの人でも触ることができる花壇)は、障害の度合いや体格の差を考慮し、高さを60cm〜80cmと穏やかに変化させている、写真中央:エントランスの門扉は早朝や夜間には閉じられる、写真右:基幹園路沿いに花壇を設置。ふれあいの庭への誘導を促す】
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【写真左:植物をくりぬいてデザインされたトピアトリーは、明暗の差により、弱視の人でもその雰囲気を味わうことができる、写真右:案内板には触知地図が描かれている青色のボタンを押すと音声案内が流れる】
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【写真左・右:修景池は子どもが水を触ることができる高さ】
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【写真左:食べることをテーマとして、レタスやパセリが並ぶ「キッチンの庭」では、植物をちぎって食べてもかまわない、写真右:園芸療法に使用されている仮設スタンド】
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写真(2) |
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【写真左:園内にある彫刻は視覚に障害のある人の作品、写真右:花壇に立つ植物の点字案内板は、かがみこまずに読むことができる高さに設置させている】
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【写真左:庭の特徴を示す案内板。「香りの庭」では、視覚に障害をもつもたないにかかわらず、植物を香りで楽しむことができる、写真中央:「香りの庭」の植物は手に取り香りを楽しむことができる、写真右:ベンチは立ち上がりやすいようにすべて肘付きで、ベンチ脇には車イス用のスペースが設けられている】
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【写真左:「音の庭」には水の滴り落ちる音を楽しむことができる水琴窟がある、写真右:視覚に障害のない人には聞き取りにくいほど小さな音だが、障害のある人には十分な音量だ】
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