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#13 動物園のユニバーサルデザイン |
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珍獣オカピの繁殖や飼育で知られる
車イスで乗車できるサファリバスが運行
情報のユニバーサルデザイン
楽しい仕掛けを通して遊びながら学ぶ
ADAの基準に沿っているかをチェック
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珍獣オカピの繁殖や飼育で知られる |
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シカゴから車で30分ほどの閑静な住宅地に、敷地216エーカー(約874,000平方メートル)を有するブルックフィールド動物園がある。開園は1934年。同園は米国屈指の動物園として世界的に知られており、特に珍重動物であるオカピの繁殖や飼育で実績をもつ。同じくオカピを擁する横浜のズーラシアとは親しい関係にあるという。
同園の高い評価は、動物の繁殖や飼育はもちろんのこと、その理念や運営方法によるところが大きい。使命は来園者の自然保護の意識と生物学の知識を深めること。年間22万人におよぶ来園者は、子どもから高齢者まで幅広く、身体能力や国籍もさまざまだ。
同園では、ユニバーサルデザインを視点としたレクリエーションや教育プログラムと、それらをとりまく施設環境で、アクセシブルな動物園をつくりあげている。1999年には「米国ミュージアムアクセシブル賞」を受賞。動物園のユニバーサルデザインではトップの水準にあるといえよう。
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【写真左:動物園南門/ブルックフィールドはシカゴから車で20分ほどの閑静な住宅地。敷地面積874,000平方メートルの動物園は市のシンボルそのもの。木立に囲まれ、広大な自然公園を思わせる。年間来園者は22万人。1999年、米国ミュージアムアクセシブル賞を受賞した、写真右:教育プログラム/動物園の目的は自然環境の保護と動物の生態を伝えること。園内にはこうした意識を高めたり、楽しみながら知識を得る仕掛けがところどころに見られる】
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【写真左:巡回バス/広大な敷地のためバスを利用する人は多い。先頭車両には車イスで乗り込めるよう、スライド式のスロープが収納されている、写真右:ワゴン/乳母車やワゴンはリクエストすれば無料で貸してもらえる。子どもや荷物を乗せるのに便利】
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車イスで乗車できるサファリバスが運行 |
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園内には屋外施設やレストラン、ショップのほか、テーマごとに17の屋内施設が設けられている。施設内は平坦で、車イスでの利用に何ら支障はない。屋内施設の充実ぶりは厳しい天候に配慮したためで、1年を通して快適な環境で動物と親しめる。全長16kmにおよぶ遊歩道には、車イスでも乗車可能なサファリバスが運行している。
獣舎は来園者が間近で動物を観察できるよう、動物側の床が高く設計され、間仕切り近くのフロアや岩にヒーターのコイルが内蔵されている。柵には低い個所や窓を設け、身長の高低差に配慮。学校の社会科見学や家族連れに好評だ。
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【写真左:獣医シミュレーション/獣医室の実物モデルで獣医体験をする子どもたち、写真中央:実物大モデル/子どもや障害者を含む利用者の要望で設置した。視覚障害のある人が触って理解できるのはもちろん、健常者にも大きさやディテールがわかって好評、写真右:施設/寒暖の差が激しい天候に配慮し、施設の中心は屋内。子どもたちが動物を観察できるよう、強化ガラスを用いたり覗き穴を設けたりしている】
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情報のユニバーサルデザイン |
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案内や地図はピクトグラムを多用し、誰にでもわかりやすくデザインしている。車イスや乳母車の利用者のために平坦なルートを記述しているほか、視覚障害のある人には、大きな文字やはっきりとしたカラーコントラストを用いた地図を別途用意している。
さらに、嗅覚(ムスクのような動物臭)や音声(解説や動物の鳴き声)を伝える工夫もある。獣舎内を映すモニター設備では、来園者が自由にカメラアングルを変えることが可能だ。
獣舎の周辺にはイルカやセイウチ、熊、ゴリラ、キリン、カエル、トカゲ、水鳥などの実物大のモデルやミニチュアモデル、体形を切り抜いた平面モデルなどが配置されている。ブロンズや樹脂のモデルは一体成形で危険な突起物がなく、視覚に障害のある人や子どもたちに大きさや手触りを知ってもらうのに役立っている。
特に霊長類の手足をかたどったブロンズレリーフが好評だ。自分の手とゴリラのそれを比較して、大きさや類似点に目を丸くする子どもたちが印象深い。
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【写真左:清掃シミュレーション/清掃着をつけ、飼育ケージの清掃を体験できる、写真中央:カットアウトモデル/視覚に障害のある人々の要望で設置。単純化した体形を把握するのによい、写真右:案内図/日差しや雨を避けるため、あずまやの中に設置。誰にでも見やすい角度、高さになっている】
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楽しい仕掛けを通して遊びながら学ぶ |
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同園がユニークなのは、身近な環境や楽しい仕掛けを通して生物とのかかわり方を体験できることだ。庭や居間、子ども部屋のモデルルームでは、小動物の飼育法を専任スタッフのもとで体験できる。また、動物病院や園長室、獣舎清掃のシミュレーションといったアトラクション風の設備もある。ぬいぐるみの犬を診察ベッドにのせ、真剣なまなざしで手術器具を操作する光景や、清掃用具を身につけ放水する子どもたちの姿がほほえましい。
クイズ形式の装置や遊び場では、プレートの質問の答えを選んだり、ゲームを楽しむうちに動物に関する知識や、生態系への関心を深めることができる。
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【写真左:ゲームとパネル/ゲーム感覚で覚える生態系や動物の生態。豊富なイラストで楽しい、写真中央:ブロンズレリーフ/人とゴリラの手を比較できる、写真右:匂いガイダンス/ムスクのような動物性フレグランスを嗅ぐことができる】
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ADAの基準に沿っているかをチェック |
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障害をもつ人々の専門ケアを担うのがアクセスコーディネーターだ。彼らはまず、サービスがADA(障害をもつアメリカ人法)の基準に沿っているかどうか、スタッフ間で検討する。さらに子どもや高齢者、障害のある人で構成されるフォーカスグループを招いてディスカッションを重ねる。その結果、先に述べた動物のモデルをはじめ、電動カートの貸し出しなどが採用された。現在、電動カートは障害の有無にかかわらずさまざまな人に重宝されている。
アクセスステッカーもそうしたプロセスを経て採用された。外見では障害とはわからない人々、たとえば聴覚障害や心臓病、呼吸困難といった人々と彼らの同伴者が、このステッカーを付けることで優先的なサービスを受けることができ、施設内でのストローラーやワゴンのもち込みを許可される。
ブルックフィールド動物園は快適さと活気に満ちている。地域に愛され、リピーターが多いのは、動物園の魅力をハードとソフトで楽しくわかりやすく伝えているため。来園者から聞き取り調査を行い、アクセシビリティへの改良を重ねている同園は、ADAの基準を凌駕したユニバーサルデザインの好例といえよう。
※このレポートは、三菱自動車が出展するインターネット博覧会のホームページをもとに再編集したものです。
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【写真左:フェイスペイント/好きな動物を模倣してフェイスペイントを施す子どもたち、写真中央:庭/動物の生態にとって植物や土は欠かせない。庭を想定した環境で小動物や昆虫とふれあう。ダンゴムシのような虫は、地中に埋められた箱で飼育されている、写真右:音声ガイダンス/動物の説明や鳴き声を聞くことができる】
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【写真左:トイレ/父親が娘と一緒に使えるトイレブース、3段階の高さの鏡、車イスでも使いやすい手洗いなど、利用者への配慮が行き届いている、写真中央:子ども部屋/子ども部屋のシミュレーション。動物の骨や化石など、子どもたちが好みそうなコレクションに溢れている。身近な住環境を通して動物への興味をかき立てる、写真右:モニターテレビ/キャプション付きで聴覚障害者や外国人にとってわかりやすい。利用者がモニターを操作して動物観察用のカメラアングルを調整できる。動物の情報データにもアクセスできる】
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