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#12 住宅のユニバーサルデザイン(アメリカの動向) |
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アメリカの住宅市場において、ユニバーサルデザイン、つまり、安全で便利で活動的で、かつ多様なライフスタイルのためにデザインされた住宅が急速に広まる兆しがある。
住宅メーカーなどと共同研究を進めているセンター・フォー・ユニバーサルデザインの2人の研究者に、アメリカの住宅市場におけるユニバーサルデザインの役割についてレポートしていただいた。
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Lawrence H Trachtman(ローレンス H.トラクトマン)
Richard C. Duncan(リチャード C.Duncan)
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ユニバーサルデザインは、個別のユーザーに適合させたり特殊な仕様を施すことなく、誰もが使いやすい製品や環境をデザインすることだ。住宅におけるユニバーサルデザインとは、低予算ですべての人たちが自分らしく暮らせる家、家具や什器・備品を整えることである。そのような住宅の実例は、段差のない玄関、通常よりも高い位置の電源コンセント、広々とした玄関や間口を備えた住宅に見ることができる。ユニバーサルな仕様は、使い勝手を考えて変更を加えたり、既存の設備や製品を注意深く選択することでも実現できる。
アメリカの人口動態をみれば、ユニバーサル住宅の市場導入には絶妙なタイミングと訴求力が勝負となることがわかる。たとえば、AARP(アメリカ退職者協会)が1997年に発行した「アメリカ人高齢者の分析」によると、65歳以上の高齢者は1996年に3390万人、アメリカの人口の約12.8%に達した。その後も高齢者人口は伸び続け、2010年〜2030年、ベビーブーマー(第2次世界大戦直後に生まれた人たち)が65歳になる頃には7000万人に達する見込みだ。その数は1996年の2倍以上となる。これに4900万人にのぼる障害をもつ人たちを合わせると、ユニバーサルデザインの住宅を必要とする人々は圧倒的な数になる。
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【写真左:アメリカ、ノースカロライナ州チャペルヒルにあるブループリント2000住宅展示場のユニバーサルデザイン住宅、写真右:中庭から見たユニバーサルデザイン住宅】
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アクセシブルデザインとの混同が市場拡大を阻む要因に
多様な障害をもつ人たちを単独のマーケティングではくくれない
マーケットの需要と供給
ホームオフィスや大型クロゼットを求める住宅購入者
多様なユーザーに複合的な利益をもたらすユニバーサルデザイン住宅
ユニバーサルデザインの住宅を推進するための5つの方法
住宅市場におけるCUDの活動
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アクセシブルデザインとの混同が市場拡大を阻む要因に |
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近い将来、新築住宅の購入者のほとんどがユニバーサルデザインの恩恵に浴するようになるだろう。しかし、増え続ける65歳以上の高齢者や障害をもつ人のニーズに比べ、ユニバーサル住宅の需要は伸びていない。実験的な住宅であろうと注文住宅であろうと同じ状況である。報告によると、注文住宅にユニバーサル仕様を取り入れたいと希望する人はほとんどなく、もしあったとしても、大規模なデベロッパーが投機目的でユニバーサルデザインの住宅を建てる例がごくわずかにあるだけだ。
建築業者や設計者、デベロッパーの間では、住宅購入者のユニバーサルデザインへの需要は一般的に低いと見なされている。フィリップ・ステファン・カンパニーズのフィル・ドーマー氏によると、そのおもな理由は「ユニバーサルデザイン」という言葉のあいまいさにあるという。多くの建築業者は、ユニバーサルデザインとアクセシブルデザイン(たとえば、スロープやクロムメッキの手すりを後付するといった、個人ニーズに合わせた技術的なデザイン)を同じだと考えている。その結果、ユニバーサルデザインをセールスポイントとして宣伝しなくなってしまう。
ホーム・プランナーズのシニア・エディター、ポーレット・マルビン氏は、ユニバーサルデザインの住宅が「車イス利用者」のためのものであるという誤解がはびこっていることを繰り返し述べている。この誤った考えを打破するため、ホーム・プランナーズは50以上の設計プランと1,700以上の「おすすめ」製品を掲載した「ユニバーサル住宅の設計プランと製品」という本を今年1月に発行した。
新築物件を探すとき、多くのアメリカ人はユニバーサルデザインの住宅の利点を見落としてしまう。また残念なことに、業者やサプライヤーも、アクセシビリティよりもユニバーサルな観点による仕様をつくりだし市場化するすべを知らない。ユニバーサルとアクセシブルデザインを混同し、買い手を高齢者や障害をもつ人たちのみに絞っていることもその一例だ。優雅さに欠けるデザインや不適切なマーケティングが販売不振の原因であるといえる。
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【写真左:ガレージから裏口に向かう通路。雨や日差しから守られている、写真中央:すべてのドアに誰もが使いやすいレバーハンドルが採用されている、写真右:家族の身長に合わせて取り付けられたロッカー式スイッチ】
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多様な障害をもつ人たちを単独のマーケティングではくくれない |
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高齢者や障害のある人の数がこれほど多いのに、どうしてもっとユニバーサルデザインが必要とされないのか?おそらく、報道されている数字がすべてを語ってはいないからだろう。障害をもつ人たちは、すべて同じ障害を抱えているわけではない。運動障害や身体障害、視覚および聴覚障害、認知障害といったように多様であり、期間も短期から長期とまちまちだ。年齢もあらゆる世代にまたがり、所得層や家族構成も多岐にわたる。そうしたさまざまな障害をもつ人たちを、単独のマーケティングやデザインコンセプトではくくれない。障害をもつ人たちのマーケットを均一な需要とみるのは間違いである。
高齢者マーケットにも同じことがいえる。元気で活動的な高齢者が大勢いるいっぽう、そうでない高齢者も多い。たとえば1992年、AARPは、高齢者の半数以上(53.9%)が日常生活の妨げになるような障害を抱え、500万人以上の高齢者が日常生活に介護を必要としていることを報告している。さらに、介護を必要とする割合は加齢にともない急激に増加することも指摘し、ほとんどの高齢者が関節炎、高血圧症、心臓病、視力や聴覚障害を含めた複数の慢性疾患を抱えていると述べている。
こうした状態の高齢者でさえ、現状あるいは近い将来の自分の姿を認めたがらない。彼らは見るからにバリアフリー仕様の住宅を敬遠し、できるだけ住み慣れた環境を好む。一般的に、自宅や近隣、地域社会への愛着は非常に強い。AARPは、高齢者はほかの世代に比べて引っ越しをする度合いが少ないことを報告している。
1994年において、過去1年で引っ越しをした65歳以上の高齢者はわずか6%にすぎない。これに対して、65歳以下では18%である。入居の予算が見合ったとしても、リフォーム費用がかさんだり家族の支援が必要だったりして高齢者の引っ越しは容易でない。
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【写真左:平坦なフロアのバスルーム。壁面やバスタブ後部と一体化した腰掛け、手持ち式のシャワー、低い位置にあるカラン、写真中央:バスタブの外周付近に設置されたカラン、写真右:レバー式カラン】
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マーケットの需要と供給 |
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アメリカの地方政府が定める建築基準local building codesには、配管、下水、電気設備、構造などの条項はあるが、アクセシビリティについての条項はない。そのため、住宅建築において、 アクセシブルデザインやユニバーサルデザインを設計に盛り込ませる強制力は働かない。
新築1戸建て住宅メーカーの多くは、ユニバーサルデザインを取り入れても売上や利益の増大につながらないと考えており、通常仕様とは異なるユニバーサルデザインの新しい試みに二の足を踏んでいる。 アメリカのいくつかの市では、政府の資金援助を得た住宅は「訪問可能」と呼ばれる仕様であることを求めている。こうした地域に建てられる住宅には、車イスの人が使えるようなフラットな玄関はじめバスルームなど少なくとも一カ所設けることを規定している。「訪問可能」であることは、ユニバーサルデザインの原則を推進する草の根運動によってまだ初期段階ながら、大きな広がりを見せている
建築業者は、現在の需要に応えるために優れたデザインの住宅づくりに懸命だ。成功した業者は高い評価を得て、成果物としての住宅は将来の発注に貢献する。こうした建築業者にユニバーサルデザインを導入させるためには何が有効なのだろうか?彼らは、利益をもたらし競争優位を保つような情報、技術、建材、設備に興味を示す。また、新しい考え方がマーケティングに有効かどうかにも関心をもっている。たとえば、「エネルギー効率」は新しい住宅構造技術を売るのに威力を発揮した。さらに彼らは、インターホンや空調設備等で優れた技術を提供し、価格を上げる機会をうかがっている。ユニバーサルデザインでも同じことがいえる。つまり、取り外し可能なキャビネットや、高さ調整が可能なカウンタートップといったユニバーサルな仕様がメーカーの標準生産ラインにのれば、建築業者がそれらを採用する率もグンとアップするに違いない。
ノースカロライナ州カリーのW.E.ディクソン社のマーク・カービー氏は、面白い事実を報告している。注文住宅を請け負う彼は、多くの家族が退職者のみのコミュニティに引っ越したがらないというのだ。代わりに人気が高いのが「超世代住宅」であるという。
W.E.ディクソン社はノースカロライナ州チャペルヒルに進行中の住宅展示場「ブループリント2000」のために『Better Home and Garden』誌と業務提携した。編集者が読者とともに行った21世紀の夢の住宅調査をもとに280平方メートルのモデル住宅が設計された。
「ブループリント2000」はデザイン、インテリア、ハイテク製品、建材に最新の製品を組み入れている。カービー氏によると、ユニバーサルデザインはすべての人たちにとってアクセスしやすいデザインである。アクセシビリティ優先がもたらした過去の粗悪なデザインを克服し、アクセシビリティを最初から建築環境に統合したユニバーサルデザインを実現することが課題である。W.E.ディクソン社は数多くのユニバーサル仕様を住宅に採用してきた。結果、ユニバーサルデザインを念頭に置いた住宅購入を希望する人が増えている。
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【写真左:可動式キャビネットによりバスルームとトイレを隔てている、写真右:キャビネットを移動させることにより車イスでの使用が可能になる】
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ホームオフィスや大型クロゼットを求める住宅購入者 |
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しかし、購入者がユニバーサルデザインを知らなければ、ユニバーサル仕様の良さを理解できない。
いっぽう、すぐにこうした住宅を必要とする人たち(たとえば、障害をもつ人たちの家族や高齢者の介護者)はユニバーサルデザインに目ざとい。ただ、そうした購入者は市場のごく一部であったり、ユニバーサルな住宅への選択肢が限られていたり、あるいは、新築住宅の購入資金が不足していたりする場合もある。
35〜55歳の世帯は、ユニバーサルデザインの住宅市場にとって大きな可能性を秘めている。この世代は一般的に教育水準が高く、物件購入の資金をもつからだ。しかしながら、このグループでさえ一筋縄ではいかない。最初の、または2件目の家を購入しようとする若い家族が、ユニバーサルデザイン仕様のシャワー(ロールインシャワー)や広い開口部、段差のない玄関、レバー式のハンドル、低い位置のスイッチ、オープンなフロアプランのメリットに気がつくとは限らないからだ。
ホーム・プランナーズ社のポーレット・マルビン氏の言葉を再び引用すると、住宅の購入者は身体機能の低下など、ネガティブな要素や将来の心配ごとについては考えたくないのが本音なのだ。下手なマーケティングや粗悪なデザインがこうした風潮に拍車をかけている。今日の購入者は、将来的な備えの代わりにハイグレードと快適性、たとえばホームオフィス、大きな寝室、ハイテク設備、ホームオートメーション、大型クローゼットを求める傾向にある。これらが「好景気」のアメリカの住宅市場における住宅販売の特徴である。
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【写真左:出し入れが楽なように高めに設置された自動食器洗い機、写真右:カウンター下に配置された電子レンジ】
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【写真左:アクセシブルな収納を実現する引き出し式食器棚、写真右:フロアに設けられた自動ちりとり口】
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多様なユーザーに複合的な利益をもたらすユニバーサルデザイン住宅 |
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それでは、ユニバーサルデザイン住宅の認識やマーケティング、さらには売れ行きを向上させるためにはどうすればよいのか? まず、多くの住宅購入者にユニバーサルデザインとその機能を知ってもらうことが先決だ。しかし疑問点は残る。ユニバーサルデザインは、今日の利益につながるのだろうか?そのためにより多くの資金を投入してくれるのだろうか?犠牲にしなければならないものがあるのだろうか?明らかに、ユニバーサルな特徴について、ほとんどの購入者はわからないし、尋ねようともしない。そして、ユニバーサルデザインについて彼らに提案できるほどの知識をもつ建築業者はほとんどいないのが実態だ。
フィリップ・ステファン社のフィル・ドーマー氏は、ユニバーサルデザインは前向きでスマートなデザイン概念として位置づけられるべきだと語る。高齢化に向かうベビーブーマー世代は、ユニバーサルデザインにとってもっとも有望な市場である。ユニバーサルデザインの価値は、機能のフレクシビリティにある。雑多で予測困難で身体能力的にも異なる家族や集団にも有効に働く。ドーマー氏はこうした条件がマーケットにも反映すると信じている。これからの30年間、人口問題はそれほど重要ではなくなり、それに代わって個人の価値感やライフステージの目標が購買決定の要因となると考えるからである。ユニバーサルデザインが価値をもつのは、規格統一された仕様で、多様なユーザーに複合的な利益をもたらすためだ。(たとえば、段差のないシャワールームは車イス使用者に理想的なのはもちろん、子どもたちにとっても使いやすいし、犬のシャンプーにも適している)。
バージニア州シャーロッツビルにあるリンハート・ホームズのランディ・リンハート氏は、活動的な高齢者をターゲットにしたユニバーサルデザインの注文住宅というニッチマーケットに照準を合わせている。彼は住宅購入にとって何がもっともたいせつなのかを調べるために、地域の消費者を対象としたグループ調査を行った結果、このターゲットの将来性に気づいた。
これからも多くの人たちはユニバーサルデザインとアクセシブルデザインを結びつけて考え続けるだろう。だが、この考えは補助器具を利用することで環境適応する人たちに対する固定観念を助長し、環境自体に対する抵抗感をも生む。これを防ぐためには、人々の意識変革が必要になる。消費者がライフスタイルの変化に理解を示し、短期間あるいは一生に及ぶ障害を考えるようになれば、今日および将来的に利益をもたらす住宅デザインのよさを見直すはずだ。
オハイオ州シンシナティで住宅メーカーを営むロン・ウェイゼル氏は、ユニバーサルデザイン仕様の高級住宅を数棟実験的に売り出し完売した。使い勝手のよさが評価されたのだ。ユニバーサルデザインの住宅メーカーは、アクセシブルデザイン住宅の型にはまったイメージを克服しなければならない、とウェイゼル氏は語る。アメリカではAARPといった団体や住宅産業が、「健常者」の視点にたったユニバーサルデザインの住宅普及のための啓蒙を急ぐときである。
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【写真左:アクセシブルな洗濯機や乾燥機のフロントパネル、写真右:横開き式の洗濯機や乾燥機】
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【写真左:車イス利用者の膝が入るようにスペースを確保したパソコン用ワークベンチ、写真右:低い位置のクロゼットハンガー】
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ユニバーサルデザインの住宅を推進するための5つの方法 |
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センター・フォー・ユニバーサルデザインのリチャード・ダンカン氏は、新築住宅のユニバーサルデザインを販売促進するためには以下のような5つの手段をあげている。
- 安全性
安全な住宅は高い評価を受ける。事故の発生を最小限にとどめる住宅ならば、子どもたちをはじめ訪問者や高齢の両親らすべてが安心して暮らせる。そうした安全性の高い設備には、優れたデザインの手すり、適切な幅と勾配の階段、温度調節器付きのシャワーや浴槽がある。
- 使い勝手の良さ
手すりは浴室デザインに合わせて取りつけられる。安全性同様、使い勝手のよさ(着替えをする際に気軽に使える)も重要だ。段差の解消は車イスの使用者はもちろん、家具を動かしたりベビーカーを押すときにも役に立つ。その他の事例として、棚板の高さが調節可能なキャビネットやクローゼット(子どもにとって大変便利)、同じく高さ調整が可能なデスク、レバー式のドアハンドル、両開きドアの冷蔵庫がある。
- 将来ニーズ
将来ニーズを考慮する住宅購入者はユニバーサルデザインのよき理解者であるとともに実践者となる。1階にフレキシブルな部屋、たとえば寝室としても使える書斎や勉強部屋をしつらえることはユニバーサルデザインの実用例だ。同じことがトイレにもあてはまる。通常は便器と洗面台のみだが、両親が泊まりにくるときには浴槽付きのバスルームに拡張できるタイプもある。また、1階はアメニティ空間だが、将来のライフスタイルの変化に合わせて用途を変更できるといった工夫も生まれている。
- 転売
ユニバーサルデザイン住宅は、さらに広い顧客層にも転売が可能だ。最近の人口構成をみると、より多くの住宅購入者が将来、便所や浴室に手すりを取り付けるために壁面補強を施すことになりそうだし、親と同居するために部屋を1階に用意する必要が生まれそうだ。
- 経費の抑制
ユニバーサルデザインを適用することにより、建築費に若干の支出が生じることがデータ上明らかになっている。しかし、後で簡単に仕様変更できるし、長期的にみれば高い費用のリフォームが不要となるため結局は経費の節約に役立つ。ライフステージの変化に影響されずに同じ住居環境で暮らせることは、引っ越しをしたり大規模なリフォームを行うよりも経費を抑制できる。
フィリップ・スティーブン社は、インセンティブマーケティングという手法をユニバーサルデザインの販売促進に適用している。まだ立証されたわけではないが、住宅ローンの利率低減や家財保険、健康保険、介護保険等の掛け金の低額化をはじめ、住宅産業界によるディスカウント価格の導入、雇用主による住宅プログラム、そして不動産税の優遇が消費を刺激する。
ユニバーサルデザインの概念は、新築住宅に大きな影響を与えている。ユニバーサルデザインの原則により、いずれは障害のある人用の特殊仕様の整備や製品を見ることが少なくなるだろう。
誰もが住宅建設において電気や電話の配線を怠らないように、将来は誰もが段差のない玄関や広いドア、高さ調整可能な作業台、手すりつきのバスルームを取り入れるようになるだろう。
ユニバーサルデザインの好例として、最近人気のオープンプランによるインテリアがある。1階をバス付きのフレキシブルルームにしたりマスタースイートにするプランである。幅広い購入者から支持を集める背景には、使い勝手がよくライフスタイルの変化に対応するデザインであることがあげられる。そして、住宅メーカーはじょじょにではあるがこうしたユニバーサルな仕様を取り込みはじめているのである。ユニバーサルデザインの推進者として、われわれはこうした動向がユニバーサルな住宅の供給を増加させると考えている。
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住宅市場におけるCUDの活動 |
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過去5年間以上にわたり、センター・フォー・ユニバーサルデザインでは、ユニバーサルな住宅をデザインし、市場化するためにいくつかのプロジェクトに参加してきた。多くの場合、設計や建築、リフォームにおいてスタッフの長年の経験が生かされている。スタッフはさらに障害をもつ人たちと定期的な打ち合わせをし、彼らにとって使いやすい環境や製品についての調査や検証を怠らない。住宅購入を希望する家族がセンターを訪問することもしばしばである。メーカーと消費者双方に協力することで先端動向を察知し、住宅の供給と需要サイドのコミュニケーションを円滑に保つことに貢献している。
- ベターホームズ・アンド・ガーデンズ(Better Homes and Garden)
センターは、『Better Homes and Garden』誌がノースカロライナ州チャペルヒルに建設したブループリント2,000住宅展示場に協力した。スタッフは初期段階から設計に参加し、設計者にユニバーサルデザインのオリエンテーションをするとともに、そうした仕様を紹介した。とくにユニバーサルデザインが生かされたのは、マスタースィート、フレキシブルなバスルームやキッチンである。さらにスタッフは工期中メーカーに技術支援を行い、段差のないシャワー室や出入り口の設置に協力した。さらに、マーケティング戦略としてユニバーサルデザインの利便性を販売促進のツールに盛り込むアドバイスを行った。
- アムハースト・ホームズ(Amherst Homes)
センターはロン・ウェイゼル氏を支援し、ユニバーサルデザインの平面計画を行うとともにユニバーサルな設備や備品を選択しオハイオ州シンシナティの実験住宅に納入した。個々の活動としては、建築計画と再検討、製品の選択、プロモーションツールのコンサルティングである。この住宅は高額だが(30万ドル以上)、さまざまな購入者が表れた。
- AARP(アメリカ退職者協会)
センターは、バージニア州リッチモンドのAARPが後援する住宅展示のデザインやプロモーションに協力した。この住宅は国内のおもなメディアによって報道された。
- ライフステージ'99(Lifestage '99)
センターは、住宅メーカー協会が毎年開催する会議のために建設した展示住宅に協力している。計画の初期段階からコンセプトづくりに関与したのは故ロン・メイス氏である。その後、スタッフがメイス氏の計画にもとづき、新たな提案を行っている。ライフステージ'99は、何千人もの人が参加するカンファレンス会場に併設され注目を集めるとともに、協会誌の一面を飾っている。
- ホームプランナーズ(Home Planners)
センターは、同社が発行予定の書籍『ユニバーサルデザイン住宅の設計プランと製品』に掲載される16の設計プランにアドバイスを行った。包括的あるいは具体的な提案が標準設計に生かされ、ユニバーサルな住宅づくりのヒントとして紹介される。共通の課題は、玄関のデザインやインテリアの動線、バスルームやキッチンのレイアウトである。スタッフは図面上で仕様変更を行い、ユニバーサルデザインの住宅設計に協力した。書籍は今年1月に発刊された。
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※以上は、季刊「ユニバーサルデザイン」05号(2000年3月発行)に掲載した記事を再編集したものです。
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