21世紀の社会システムをデザインする「ユニバーサルデザイン・コンソーシウム」  
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ユニバーサルデザインとは?
 
2.ユニバーサルデザインの事例と動向
 
#02 公園のユニバーサルデザイン
 
 究極のユニバーサルデザインの公園とは、障害の有無や年齢に関係なく、誰もがアクセスできるだけではなく、ユーザーが計画し、運営・管理する公園ということになる。その意味ではこれまで以上に、行政、市民、企業のパートナーシップが重要になってくるだろう。
 
公園を起点とした、ユニバーサルデザインのまちづくり
ユニバーサルデザインの公園開発のアンビバレンツ(矛盾)
すべての公園がアクセシブルである必要はない
ワークショップ方式でユーザーニーズを集積する
大阪府立大泉緑地ふれあいの庭・写真
ソフトがユニバーサルでなければ、利用者数は増えない
ユーザーニーズに敏感に反応し進化していく公園
公園を起点とした、ユニバーサルデザインのまちづくり
 
 「自然との共生」が21世紀に生きる人類共通のテーマであるとするなら、公園が社会全体に果たす役割をもういちど見直す必要があります。リハビリの場やエコ教育の場にもなる公園は、超高齢化や環境問題など21世紀の課題を解決できる可能性に満ちあふれています。公園を起点としてまちづくりを発想すると、福祉施設や教育施設が公園の中にあっても不思議ではありません。しかも、その公園は行政の押しつけではなく、ユーザー(市民)が主体となって造り上げていく公園でなくてはならないでしょう。ユニバーサルな公園とは、障害の有無や年齢に関係なく、誰もがアクセスできるだけではなく、ユーザーが計画し、運営管理する公園ということになります。そこでは、これまで以上に、行政、市民、企業のパートナーシップが重要になってきます。公園は目的や規模により「自然公園」と「都市公園」の2つに大別できますが、この特集では、住民が計画に参与しやすい「都市公園」にフォーカスを当てています。
 
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ユニバーサルデザインの公園開発のアンビバレンツ(矛盾)
 
 自然風景地周辺を開発するにあたって、市民団体間で意見が対立し、合意形成が進まないケースが増えてきています。環境派は手をつけるなと言い、福祉派は車イスの遊歩道を造れと言う。市民参画に熱心な自治体ほど、合意点を見いだすのに苦慮しているのが現状です。今生きる人の福祉を優先するのか、それとも次世代のために自然環境を残すのか。我々にとっては難題です。
 都市部ではアクセシビリティに最大限配慮し、そこから離れるに従がって自然環境が重視される傾向があります。公園には「都市公園法」にもとづく都市公園と、「自然公園法」にもとづく自然公園がありますが、アクセシビリティを優先させなければならないのは都市公園の方です。日本では、自治体が定める「福祉のまちづくり条例」が、都市公園などの外部空間についても整備指針を設けていますが、ミニマムな整備規準を定めたものなので、この規準を満たしたからといって「ユニバーサルデザインの公園」であるとはいえません。そこには、さらにきめ細かな配慮が要求さます。
 
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すべての公園がアクセシブルである必要はない
 
 ユニバーサルデザインを標榜する静岡県では、現在サッカーW杯の会場となる競技場やビオトープ公園などで構成される小笠山総合公園を整備中ですが、園内にある学術保存林(原生林)は環境庁の意向もあって、整備の対象外としています。車イス使用者がアクセスできる見晴らし台を造り、そこからの景色を楽しんでもらう計画です。トレイル(自然遊歩道)については、障害のある人でも1人で利用できるトレイル、介護があれば利用できるトレイル、体力がある人のためのトレイルなど様々なトレイルを造り、利用者のアクセシブル選択肢を増やすことで、自立支援にも役立てています。この時、勾配などの情報は、事前にサインで知らせる仕掛けを行っています。
 
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ワークショップ方式でユーザーニーズを集積する
 
写真:視覚に障害をもつ人は、エントランスの触知地図で公園の全体像を把握することができる(フラッドパーク) ユニバーザルデザインの公園づくりはワークショップ方式が主流となっています。この方式で設計された代表例が“フラッドパーク”(米国カルフォルニア州サンマテオ郡)です。ワークショップを、いろいろな利用者のグループごとに開いて、障害のある多様な人々がどのように公園を利用したがっているのか、子どもたちはどのような遊びを好むのか、地表面の素材、園路、駐車場、トイレなどは何がふさわしいのかなどの情報を入手し、それをデザインに反映させています。
 最近は日本でも、住民参加のワークショップ方式による公園づくりが盛んです。しかし、それを有効に機能させるには、質量ともに膨大なヒアリングの成果をベースにしなければなりません。その点で“ふれあいの庭”(大阪府)は、計画前や竣工前に当事者によるきめ細かな検証を行い、我が国で最初のユニバーサルデザインの公園を生み出したといえます。自らが参加したことで愛着が生まれ、完成後も地域住民が運営・管理に積極的に関わっていくことが大切です。
【写真:視覚に障害をもつ人は、エントランスの触知地図で公園の全体像を把握することができる(フラッドパーク)】
 
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大阪府立大泉緑地ふれあいの庭・写真
 
写真:ユニバーサルデザインを取り入れて造られた   写真:エントランスの門扉は早朝や夜間には閉じられる   写真:ベンチは立ち上がりやすいようにすべて肘付きで、ベンチ脇には車イス用のスペースが設けられている
 
【写真左:ユニバーサルデザインを取り入れて造られた、写真中央:エントランスの門扉は早朝や夜間には閉じられる、写真右:ベンチは立ち上がりやすいようにすべて肘付きで、ベンチ脇には車イス用のスペースが設けられている】
 
写真:視覚に障害のある人は、池の水が流れ落ちる音で水辺の雰囲気に浸ることができる   写真:修景池は子どもが水を触ることができる高さ
 
【写真左:視覚に障害のある人は、池の水が流れ落ちる音で水辺の雰囲気に浸ることができる、写真右:修景池は子どもが水を触ることができる高さ】
 
写真:食べることをテーマとして、レタスやパセリが並ぶ「キッチンの庭」では、植物をちぎって食べてもかまわない   写真:花壇に立つ植物の点字案内板は、かがみこまずに読むことができる高さに設置させている
 
【写真左:食べることをテーマとして、レタスやパセリが並ぶ「キッチンの庭」では、植物をちぎって食べてもかまわない、写真右:花壇に立つ植物の点字案内板は、かがみこまずに読むことができる高さに設置させている】
 
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ソフトがユニバーサルでなければ、利用者数は増えない
 
写真:公園ボランティアの必要性が高まっている(富士山こどもの国) ハード面でユニバーサルデザイン仕様が施されている公園であるからといって、ユニバーサルデザインの公園であるとはいえません。ソフトプログラム(野外学習、公園案内など)が充実していなければ、結局利用されなくなってしまいます。“富士山こどもの国”(静岡県)では、ボランティアが中心となって多数のイベントを開催して集客に努めています。大阪府では“ヒーリングガーデナー”と名付けて、公園ボランティアを募集。また、公園を単体として捉えるのでなく、交通や道路計画とも連動して考える必要もあるでしょう。公園に辿り着くまでに、無数のバリアを超えなければならない現状では、ユニバーサルデザインの公園であっても、利用者数は伸びません。
【写真:公園ボランティアの必要性が高まっている(富士山こどもの国)】
 
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ユーザーニーズに敏感に反応し進化していく公園
 
 どんなにユーザーニーズを集積・分析したとしても、ディテールにおいて多少のほころびは出てきます。ハード面の欠点、ソフト面の不備を包み隠さず情報公開し、改善点を見つけて速やかに対処していかなければなりません。行政担当者や設計者にとっては、欠点を公にするというのは大変勇気のいることですが、これをやらないとユニバーサルデザインの公園は進化しません。ユーザーの求めているものが、計画段階と同じであるとは限りません。新たな発見があり、新たな施設を付け加えることもでてくるでしょう。そういう意味では、ユニバーサルデザインの公園とは、全員参加の永遠に完成しない公園ともいえるかもしれませせん。
 
※以上は、弊社発行のユニバーサルデザイン07号(2000年2月発行)に掲載した記事を再編集したものです。
 
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